*ゴドナルでえっちぃ話です。
やっぱり両方女性です。
望む所だぜ!って方だけ、どうぞ。
(うぅ、暑い……)
と、成歩堂は顔を顰める。
自分より余程立派な住いの神乃木の部屋には、勿論エアコンと言う文明の利器がある。しかし、それは神乃木が長い眠りから覚めてからこっち、1度も起動した事は無かった。曰く、機械の風は好きじゃない、だそうで。それは自分も思う事だけど、こう暑いとつけたくなるものじゃないのだろうか。
(もしかして、わざとつけないのかな……)
被害者妄想、みたいな感じもあるが、おそらくはそうかもしれない。
何せ、この暑さのせいで自分は衣服を身に付ける事が億劫で、未だに下着一枚のままで居るのだから。
勿論、傍に服があれば着ただろう。そこまで恥知らずではない。しかし、目覚めれてみれば、自分の服は何処にも無かった。そう、脱ぐ前に着ていた服ですら。
答えは極めて単純である。神乃木が隠した。
いつも、という程ではないがたまにこうだ。
服を隠されておろおろする自分を見たいというよりは(それもあるのだそうだけど)裸が見たいという単純な理由で。それにいつも呆れてしまう成歩堂だ。
(そんなの、散々見たじゃないか!)
それはもう、自分の知らない所まで。隅から隅までじっくりと。
だからこれ以上何を求めるのかと尋ねたら、あんなものじゃ全然足りない、との返事だった。
あれで足りないというなら、神乃木が満足する時はおそらく自分は壊れてしまうだろう。確実に。
(さっきだって、あんなに……… ……………)
思い出してしまい、体と顔が熱くなる。
このままじゃダメだ、と思った。ほぼ全裸なのも手伝って、妙な気を起こしてしまう。それを神乃木に感づかれたら、大変だ。
そう考え、のそ、と起き上がったところで神乃木が寝室へ入って来た。
「お目覚めかい、コネコちゃん」
「……………。神乃木さん、服………」
「クッ……固ぇ事言うなよ。あんなもん、部屋で居るだけなら必要ねぇ」
(だったら、神乃木さんはどうなんだ!)
一枚しか身につけていない自分と違って、神乃木はフル装備だ。スラックスからベストまで。ネクタイはしてないけれど。相手がきちんと着ていると、ますます自分の格好が恥ずかしい。シーツに包まおうにも、そのシーツすら無かった。仕方無しに、その場で膝を抱える。
と、頬に冷たい物が当たった。
「ひゃ!?」
反射的に見てみれば、それはアイスキャンディーだった。ミルクの。
「火照ったコネコちゃんに、冷たいミルクのプレゼントだ」
「……………」
何でこの人こういう言い方しか出来ないんだろう……と憮然となりながらも、受け取るべく手を伸ばす。
が。アイスキャンディーを持つ神乃木の手は、それから逃げるように遠ざかった。
「?」
「口、開けな」
「…………………」
だから、なんでこの人は、と楽しげに自分を見る神乃木を睨みつける。しかし、涙目で真っ赤な状態では威力も半減、むしろ可愛いだけだ。
「自分で、食べれます」
「俺が、食わせたいんだ」
「……………」
言葉を区切ってはっきり主張すると、相手も真似て反論してきた。
もういらない、と突っぱねてしまおうか。しかし、成歩堂がそうするより先に、神乃木がその口元に突きつける。相手の顔を伺うと、神乃木はにやり、とした不敵な笑みを浮かべていた。
「……………」
この顔をしている時の要求を突っぱねると、その次にはもっと恥ずかしい事を強要されてしまう。今までの経験で判った事だ。
諦めたように、口を開ける。薄く開いた所で、半ば強引にアイスの先が口に割り込む。
「ん………」
冷たさに顔を顰めたが、それに慣れれば味わう余裕も出てくる。コンデンスミルクの濃厚な甘さは、けれどアイスらしくさっぱりしていて、美味しい。食べようと歯を立ててみたが、意外と固くてそれは諦めた。
「歯は立てるんじゃねぇぜ、コネコちゃん」
「…………?」
どういう事なんだろう、と思っていると口の中のアイスが引き出される。
「んん?」
何事だ?と不思議に思いながらも、甘さと冷たさを求める体はそれを追いかけた。
と、思えばまた口の中に入れられる。
本当に何なんだ、と思いながら、口の端から零れそうになる溶けたアイスの液を、ベットに零してしまわないよう、慌てて啜る。
ジュル、と音を立てて吸った時、胸がドクン、と熱く疼いた。快楽中枢でも刺激されたみたいに。そうすると、勝手に口の中を移動するアイスの感覚が、気持ちいいと思えた。もう、追いかけるのは止めて、相手のなすがままにしている。
(……って言うか……何か、コレ……)
太さのあるものが、口を出たり入ったりしている。凄く卑猥な何かを連想しそうで、それを食い止める自分と想像する自分が鬩ぎあう。
「ん………ん、……ふ…ぅ………」
口の中に何かが入っている息苦しさに漏れる息が、いつの間にか随分と悩ましげなものになっている。
自分のその声に、また一段と体が熱くなる。気づけば、胸を隠すように膝を抱えて座っていたのに、手をベットに着いて、腰を少し浮かせて前のめりの姿勢を取っていた。
少しぼぅっとなってしまったせいか、口元が疎かになり、端から冷たい液が零れる。それは胸の上に落ちて、色づいた突起へと伝う。その感触に、口は塞がれたまま甘い声を出して、大きく身震いをした。
「んんっ…………あ、………?」
ぎりぎりまで出されても、口から出る事は無かったアイスがけれど完全に出された。後半は口に含んでただアイスを溶かしていただけとなっていたので、アイスの回りは唾液の透明な膜が張っているように見える。それは、自分の唇と繋がった。その糸は切れて、神乃木の手に伝う。それを、彼女はぺろりと舐めとる。
「……ふーん………」
と妖しく目を細めて自分を見詰める双眸は、何か研究者が観察対象を見るみたいでゾクリとした。
「アンタ、フェラする時はそんな顔になるんだな」
「ふぇ?……………… ―――――ッ!!!」
さっき思い出しかけた何かをそこで突きつけられ、顔から火が出そうに真っ赤になった。
「ち、ち、ち、違いますッ!違いますそんなの!」
「そうか?ただアイス食う割には随分うっとりしてたみてぇじゃねぇか」
「ち――が――う――ッ!」
背を背け、耳を塞いで喚き散らした。
いつもいつも、これ以上恥ずかしい事は無い、って事をされているのに、どういう訳かその次もこれ以上無いくらい恥ずかしい事をされる。いつか神経が焼ききれてしまいそうだ。
「――きゃぁッ!?」
「クッ、いい声だ」
上擦った悲鳴を上げたのは、背中につぅ、とアイスで撫でられたから。
伸び上がって無防備になった腹を片腕で易々と抱え、神乃木の足の上に座らされる。
「やっ……離してください!離して!」
このまま居たら、間違いなく恥ずかしい事をされる。確実に。
自分の頭の中で煩い程警戒警報が鳴り響くが、生憎それに応えられそうも無かった。
「ひゃっ!」
今度は首筋に。身を竦めると、今度はそれで産まれた隙で片手を掴み取り、神乃木の口でねっとりと嘗め回された。ぞくぞくぞくっと背筋に緩い快感が駆け上る。特に、指との間を、舌の先でなぞらるのが、弱かった。
「や……ゃ………っ」
それでももう片方の出て、体の表面を勝手に移動するアイスを持った手を止めようとするのだが、それこそ神乃木にとってはコネコみたいな抵抗でしか無いのだろう。舐められている指から、神乃木の口元が歪んだのが判る。
其処には来ないで、と必死に胸中で懇願していたのだが、それがむしろ目的とばかりにアイスを胸の突起に押しつけらる。
「ひっ!やぁッ!冷たいッ!!」
喚いて、激しい抵抗をする。その甲斐あってか、神乃木に捕らえられていた手が外れた。本当は、向こうが外したのだが、今の成歩堂は気づかない。
両手で持って、その手を止めようとするが、空いた手が片方の胸を弄る。と、面白いくらいに両手の抵抗が止まる。
「く、ふ………うぅぅん……ッ!」
感触が何処かに逃げるように、と頭を振る。左右に振られる後頭部に、神乃木は軽くキスをした。その些細な感触は、相手には気づかれなかったが。
「声は出せ、っていつも言ってる筈だぜ?」
「……い……いや………」
意地悪く突起を人差し指と親指で摘み上げても、返ってくるのは拒絶だった。
我が強いというか、気が強いと言うか。
いっそ全部流されてしまえば、泣く程までに羞恥に悩まされる事も無いだろうに。
しかし、だからこそ。
堕とし甲斐があるというか。今のこの姿があるからこそ、快感に順応になった時が一層艶かしい。
「言う事聞かないコネコちゃんには、ペナルティを奢っちゃうぜ?」
「…………?」
零れた涙が伝う頬にキスを施す優しいその仕草とは裏腹に、何か思いっきり不吉な言葉を言われたような気がする。
何するの、と訊こうとする前、神乃木が動いた。
今まで神乃木片足にだけ乗っていた訳だが、体の真ん中に移動させられて。そして、膝の裏に神乃木の足が潜り込み、足で足をがっちりホールドさせられた。当然、開く格好で。
「……な、何…………」
もう嫌な予感しかしなくて、震える声で振り返る。
すると、最初に比べて半分くらいの細さになったアイスキャンディを、神乃木が見せ付けるようにつぅ、と舌で舐める。
「……………」
まさか。
ふと思いついた自分の想像に、顔が青くなる。
神乃木はそんな自分を見て、それが正解だとでも言うように妖艶に笑む。
確信となったのは、最後の一枚を取られた時だ。神乃木に渡された下着は、サイドを紐で括るタイプだったので、両足を封じされたままでも脱衣可能だった。はらり、と布が取り払われる。
「―――――ッ!」
別に対面に誰かが居る訳でもないが、それで平然と出来る筈が無い。
「や……止めて止めて!神乃木さん、止めて!!!!」
じたばたと足を動かしてみるが、戒めは解けそうに無い。
「下の口にも奢ってやらなきゃなぁ?」
「………ッ!」
耳元でねっとりと囁かれ、心臓と言わず体が跳ねる。
本気でする気だ。脅しじゃなくて。
(や……やだ―――ッ!そんなの―――――ッ!!!)
それでもし気持ちよくなろうものなら、自分はまるっきり変態ではないか。そんな姿、神乃木には見られたたくないのに!
しかしそうしようとしている方こそその神乃木なのだが、パニックになっている成歩堂はその現実に気づきにくいみたいだった。
冷たいアイスがヘソの辺りをつぃ、と触れた感触に、ビクンと体が戦く。
「か……神乃木さん……お願い……っ止めてぇ……!」
つー、と下降するアイスに身もだえながら、必死に懇願してみるが、神乃木はすっかりそのつもりで撤回する気はさらさら無いみたいだ。
「そう怯えるなって。さっきみたいに、きっと気持ちよくなるぜ?」
「……っいやぁ…………!」
それこそが嫌なのに、何で判ってくれないのか。ぼろぼろと涙が出た。小さい頃もこんなに沢山泣いたが、大人になった今も泣き喚いてしまうだなんて。なんて、見っとも無い。
「ぁ、あ………だめ、だめ………」
するならさっとやればいいのに、勿体付けてわざと自分の羞恥心を煽る。そこまで判っているけど、無反応でいられる筈が無かった。
ひんやりした空気が、火照ってヒクつく箇所に近づく。そこまで来たら、すぐに触れた。
「…………ッ!冷たっ……!やだ、神乃木さん!いやッ!」
一旦諦めた抵抗を再開する。しかし触れている状態で自分が動くと、その摩擦でアイスが溶けるのを感じる。ぽたり、と雫が太腿から落ちる。
「ひっ――ッ!」
ずるん、とアイスの全長を使って撫で付けられる。その感触に、身震いした。
「やっ………――きゃぅッ!」
「クッ……やっぱり、此処が一番いい声で鳴くぜ……」
おそらくは大きく膨らんでいるだろう粒のある所を撫でると、一層甲高い嬌声が耳を擽る。彼女が感じているのは、力が入って丸まった足の先でも判る。
「ゃ、やんっ、あ、ああッ!っあ――ッ!」
一番快感に弱い所を責められて、緩んできた入り口にくちゅり、と神乃木の指が入る。中に入った指は折り曲げられ、空いた隙間に潜り込むよう、もう1本挿入された。
「は………あ、ぁ………」
まだ挿れられただけで、特に刺激は施されていない。中に何がある感覚だけがして、身震いする。
中の指をゆっくり動かすと、細い肩が強張る。快楽を感じ取る感覚は入り口にあって、むしろ中は感じられないというから、掻き混ぜられている感触だけがしているんだろう。
ある程度指を押しかえす力が薄れた頃、ゆっくりと指を引き抜いた。引き抜く時、成歩堂から鼻にかかった甘い声が発せられる。つぅ、と触れた液が指をねっとりと濡らしていた。
(一度イかせてやりたい所だが……生憎これには時間制限がついているもんでなぁ)
溶けたアイスは、手首まで伝っていた。それを、舐める。自分には甘すぎると思った。
(さて、と)
時間が限られているのなら、早くに越した事は無い。
濡れたままの指で入り口を広げ、記憶を頼りにその箇所へと埋め込む。自分の予想は当たったらしく、突き進むアイスは塞き止められる事はなく、そのまま埋まっていく。その感触に、成歩堂の目が見開かれる。
「ひっ!」
ぐぐ、と熱い襞を押し入って、冷たいアイスが迫ってくる。そしてアイスの周囲は体内の熱さでじんわりと溶けていく。液体となったそれは、合間を縫ってぽたぽたと下に落ちていった。
「い――――ッ やだッ!やだやだやだッ!取って!やだ!出してぇッ!!」
おお、いつになく激しい抵抗だ、と必死の彼女を呑気に眺めた。
「やだもうっ、こんなのやだぁッ!やめてよぉっ!冷たいッ!変になるぅ……!」
腕を掴む手は、もはや抵抗を止めて縋り付いている。
さすがにアイスで代用されるのは無理があったかな、と、それでも諦め悪いように中で抽出のような緩い出し入れをしてみる。それでもやっぱり、自分の好きなあの嬌声がする事は無く、悲痛な拒絶の悲鳴だけだった。
失敗か、といい加減それを認め、アイスを抜き出してやる。
と。
ポキンとか、パキンとか、とにかく何か折れるような感触がした。
「……………」
まさかな、と思って取り出したそれを見てみると、アイスが半分に折れていた。溶けてなくなったのではない。折れた断面がまだ見える。
……ここに半分があるという事は、その残り半分は……やっぱり今まで入れていた所にある、という訳で。
「……ふ……ぅ………かみのぎ、さん………?」
散々抵抗して、精神的に消耗したのだろう。力なく呟く声は、いつもなら唇ごと吸い尽くしてしまうのだけども。
彼女もまた、出て行った感じはするのに中に残っているような感覚に戸惑ってるようだ。助けを求めるように緩々と振り向いたその先で、なんとも衝撃的な証拠を目撃してしまう。そう、半分に折られたアイスを。
「……!…………!ッ!!!!!!」
震える口元を押さえ、指でそれを指す。
神乃木は、ちょっと困ったように頭を掻いた。
「……自分で出せるかい?」
膣圧で多分出ると思う。神乃木はしれっと言った。
そして、成歩堂にそう言う。
「ッ!……ば、馬鹿ぁ―――ッ!!神乃木さんが何とかしてよそんなのぉ―――ッ!!!」
何て事をさせるんだ、と、顔を赤くして、目一杯叫んだ。
果たして彼女は気づいただろうか。そう自分が叫んだ時、実に意地悪く口元を上げた事を。
「そうかい。なら………」
「わ…………うわぁッ!」
「こういう時はきゃあって鳴きな。コネコちゃん」
色気の無い成歩堂の悲鳴に、神乃木の注釈が入る。
しかし、今の成歩堂にそれに異議を唱える余裕は無い。
神乃木を座椅子代わりに座っていた体制から一転して、ベットに仰向けで寝転がっている。しかも、腰を叩く抱え上げられて。もう、肩しかベットにはついていない。いや、そんな苦しさはどうでもいいのだ。問題なのは、すっかり全部神乃木の目前に曝してしまっている事だ。自分でどうなってるかも、把握できない箇所を。
「!!!!!」
おそらく今までで一番の羞恥が襲う。体が戦慄き、目が潤んで目元に涙が溜まる。
「や……止めてください……っ!」
震える声でそう呟く成歩堂はは、捕食前の小動物だ。しかし残念ながら、食べられる事は免れない。
「何とかしろ、って言ったのはアンタだぜ」
「だ、だからって、こんな、こんなのっ……!」
とてつもない羞恥と連動して、其処がひくんと伸縮したのが判った。その後、神乃木がシニカルに笑う。
――見られてる!
改めてそう自覚してしまい、一瞬恥ずかしさのあまり意識に霞がかかる。
じぃ、と見られているのが、顔を逸らしても感じる。視線に何か物理的な力でも働いているみたいだ。
「や、ゃ……ひっ!」
局部には触れないで、そこから溢れ肌を伝う乳白色の液体を啜る。それはさっき手首に伝ったものを舐めた時より、余程甘く思えた。
「や……やだぁ……かみのぎさ………ぁん……」
目を熱で潤ませ、口元に手を当てて喘ぐ彼女は、子供みたいで愛らしく、娼婦みたいに煽情だった。軽く肌を吸うと、嫌々をするみたいに頭を振る。
「やぁ……だめぇ……」
足の付け根を周辺に責める。わざとじれったく。
自分の方から促すまで、続けられるのだろうか、とぼんやり思う。過去の経験でそうされた時を思い出し、体が疼いた。
「……中出しされた後みてぇ」
成歩堂自身のものに押し出されるように溢れる白い液体を見て、神乃木は思わず呟いた。呟いただけだが、それは近くに居る成歩堂の耳にも、当然入った。
「……ばっ……馬鹿あぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!」
――ガスッ!
「っ!」
「えっ?」
まさか当たるまいと思って繰り出した足は、しかし確かに何かを蹴った。
その後神乃木の詰まった声を聞き、その手が離れた。ばたん、と腰がベットに落ちる。
とろ、と溢れる感触に顔を赤くしながらも身起こす。神乃木が、顔を押さえていた。
「かっ……神乃木さん!神乃木さん!!」
「……いってぇー……」
神乃木が素直に苦痛を言葉にするのは、初めてだった。成歩堂は今までされた仕打ちも忘れ、神乃木の身を案じる。
「神乃木さん、大丈夫ですか!?」
もしかして痣になっているだろうか。まさかと思うが、脳にまでダメージが及んでいたり。
神乃木の肩に添えられていた手が、がし!と強く掴まれる。当然、神乃木に、だ。
「かみ…………っ!」
見据えられた双眸を見て、背筋が凍った。その目は獰猛な肉食獣のそれだったから。
それが細められる。
また、身震いした。
「罪には罰だ。そうだろう?まるほどう」
「っ…………」
元はと言えば、貴方が悪乗りしすぎたからだとか、自分には正当な理由がちゃんとあるのだろけど。
抱き寄せられ、耳元で囁かれた宣告は、絶対の命令のように思えて何も言えない。
さぁ、何をしようか、と算段している顔で自分の頬から首筋を撫でる。
ぞわりとした。
きっと今までに無いくらい、快楽に支配される。
神乃木の手によって。
「ぅ……うぅ………」
「ほら、コネコちゃん。早くしな」
じゃないと自分でやる、と言い出しかねない神乃木の態度に、成歩堂はのそのそと動いた。
今、神乃木が寝そべっていて、その上に成歩堂が覆いかぶさっている。と、言っても成歩堂が施す訳でもない。
以前、恥かしくて恥ずかしくて必死に懇願して免れた行為があったのだが、それを今要求された。顔を蹴ったという負い目のある自分は、それを跳ね除ける事が出来なかった。いや、あの双眸を見た後、彼女に逆らうなんて出来なくなっている。
神乃木の上を移動する成歩堂は、腹を超えて胸を超えて、頭――顔までやってきた。
「………………」
ごくん、と生唾飲み込んで、彼女の髪を踏まないように注意して膝を付け、顔の上に座り込むような姿勢を取る。
「もっと腰を下ろしな。そこまで届かねぇ」
「っ!………っ」
無意識に上に上がりそうになる腰を、ゆっくり降ろして行く。いつ愛撫されるんだろう、と考えながら。
と、腰を神乃木の両手が捕まえる。ああ、されるんだ、と頭の片隅で感じ取った。
ざらりとした熱い感触が、ひくつく其処を撫でる。すぐさま、弱い電流のような刺激が全身に走る。竦みあがって上がりかけた体は、腰を掴む手が許さなかった。
「……っあーッ……あぁ、ぁ、あ……ッ!」
言葉にならない声だけが漏れる。ともすれば膝が崩れて、神乃木の顔の上に本当に座り込んでしまいそうだ。そんな事になりそうだから、必死に抵抗してるのに、どうして神乃木はさせたがるのか、さっぱり判らない。別に、さっきみたいに自分が寝転んだ格好でいいと思うのに。する事は同じなのだから。しかしそれを言えば全く同じ内容で反証されるのは目に見えているので、あえて言わなかったが。
「か、かみの……ぎ………っぁぁぁああああッ!」
それまで入り口を舐めていただけの舌が、つぃ、と上に移動して芯を舌先で転がす。それに連動するように、掴まれた腰の上がビクン、と大きく跳ねた。
「んゃ……あ、はぁッ、は、あ――――ッ!」
そのまま弄られ続け、そこから湧き上がった快感が頭の頂まで登り詰めた。ふぅ、っと気が遠くなるような感覚。その間にも愛撫され、下がひくんひくんと大きく伸縮する。その度熱い液を溢れさせて、すっかり開ききった箇所では留める事は出来なくて、下にぱたぱたと滴る。おそらく、神乃木の顎や喉を濡らしているだろう。そう思うと、彼女を穢してるように思えて、酷く居た堪れない。
「……か……かみのぎさ……も、もうコレ……いやぁ……ッ!」
軽い虚脱感に耐えて体を支え、そして神乃木に必死にそう伝える。他のどんな恥ずかしい事だって我慢出来るから、この姿勢だけは嫌だ。そんな風に訴えてみるが、そんな自分が却って相手を煽るみたいだった。クッ、といつものように、喉の奥で笑う声が、今は体に響く。それすら快楽と受け取って。
「ぁ、ふぅ……あっ……あぁぁぁあああっ………あぁぁぁんッ………」
ひくついて物足りなさそうに口を開いていた所に、神乃木の舌がするりと入る。口は素直に甘い声を出し、それで感じ取っている快楽の度合いを神乃木に伝えた。ざらついて熱い舌で弄られるのは、細い指で弄られるのとはまた違った快感がある。どっちがいい、と問われても、自分は答えられないだろう。――どっちも、いい。
最初はきちんと正座するように足を折り曲げていたのだが、今となっては刺激に体が反応する度に足は崩れ、乱れ、としても体を支えてはいられない。なんとか堪えようとするが、じわじわと腰が下がっているのが判る。と、舌に埋まったままで、入り口に何かが触れているのを感じた。
それが神乃木の唇だとしたら、完全に顔につけてしまっている。
いや、もう、つけている。
「――――……」
頭の奥がスゥー、と、熱くなったのか冷たくなったのか。プツン、と張り詰めすぎて何かが切れた感じがした。そうしたら、特に違った事をされている訳でもないのに、感じ取る快楽が倍増したように思えた。
「ぁ……あ―――ッ!あぁぁぁぁぁ―――ッ!」
声を止めようだとか、堪えようだとか、そんな風に考える所が消えてしまったみたいに、声を上げていた。まるで他人のように甘い響きをする声だが、紛れもなく自分の声だ。今まで、幾度となく神乃木に引きずり出された、それまで知らなかった自分の声。この声を発すると、その振動すら体を溶かしていく。
あられもなく曝す嬌声が、時折甲高くなる。その度、軽い絶頂を迎えている。何度それを迎えたのか。今までと違う大きな波を感じた。
「ふぁっ……ん、ぁぁぁああッ……イ、ク……かみのぎさ……イッ……ちゃうよぉ……!」
大きな絶頂の予感を感じ取り、自分を抱えるように組んでいた手をそろそろと神乃木の頭に伸ばす。離して、と行動で訴えた。
「イきゃぁいいじゃねぇか?我慢は体に悪いぜ」
一旦口を離し、上にある彼女に言う。
小首を傾げ、戸惑うように目を潤ます彼女はとても妖艶だった。酷く、魅力的で。
おそらく成歩堂本人は、自分に翻弄されていると思うだろう。しかし、実際はどうなのか、神乃木は判らない。この状態の彼女を引きずり出す為に、必死になって奉仕しているような気にもなる。知らず彼女の掌の上で転がっているような。
まぁ、それで悪いとも嫌だとも思わないのだから、自分もいい加減末期だと思った。
思うに、異国などで立場の高いものを誑かして国を傾けた悪女というのは、知略に満ちた狡賢い策士なんかではなく、彼女のように無垢で純粋な存在だったのではないだろうか。だからこそ、他の全てを省みない暴挙に出れたのだろう。そんな人の愚かな部分は、神乃木は決して嫌いではなかった。
(つまりは、ただの自己弁護かい?)
あるいは、同類を哀れんでいるだけ、とか。頭の片隅でそんな事を考えた。
「あ、ぁ、かみの……ぎさ、ん、だめ、ホントに……っあぅんっ……イっちゃ、ぅ……」
成歩堂が切羽詰っているのが、途切れ途切れになる声で判る。
「だから、イケばいいだろう?」
殆ど離す事無く、告げる。それだけで、体は過敏に反応した。震える足を身近に感じ、満足そうに目を細める。
「……ぁ、やだ、ぁぁ……!」
「どうして?」
わざと優しい声でもって、尋ねると、彼女はふるりと身を震わせた。今頃でも、まだ恥らう部分があるのだろうか。
「いっぱいイく……吹いちゃう、よぉ……」
自分の体だから判る。愛撫を施されている奥に、溶けた熱が渦巻いているのが。出口を求め、きっと一気に溢れてしまう。今だって、はしたなく零す量を増しているのに。
いつも大きな絶頂には沢山溢れて、そして落ち着いた頃にシーツを見ると、想像の倍くらいに染みが出来ている。それが、今の姿勢だと、全部神乃木の顔に降り注ぐ訳だ。そんな事はあってはならないと、殆ど恍惚した状態でもそれは拒んだ。
しかし、神乃木の方と言えば。
「別に構わないぜ」
何でもない事かのように言い、成歩堂を登り詰めらせる為の行為へ没頭していく。
「う、ぅそ……あっ、あっぁっ、っ」
神乃木のセリフが嘘でも冗談でもないのは、内部にある舌が確実に感じるポイントを舐めている事からも判る。
「……ひぃぁ……あ―――………!」
声が跳ねるようなものではなく、微かに聴こえるか細いものへと変わっていく。感じ過ぎている時の、成歩堂の声だった。
「っあ――……だめ、もう、だめ……だ、め……かみのぎ……さんっ………」
足の付け根がガクガクと引き攣り、つま先に力が入る。
もうすぐ、だ。
「だめぇ……もぉ………っ――――― あぁんッ!」
神乃木が決定的な何かを与えたというよりは、成歩堂が堪えきれなくなったという具合だった。
自分の奥でパシャンと何かが弾ける。溜め込んでいたものを開放する感覚に、この時だけは一度自分の状況を忘れた。そして、平衡感覚を無くし、ガクンと体が崩れる。
「……っと」
すかさず、神乃木が肩を支え、顔から倒れるのは免れた。そのまま自分の体の上から、転がすように横にさせた。代わりに、自分はベットの上に身を起こす。
「…………っふ、」
顔を拭った後に一息ついたような、溜息。
やっぱり顔に掛けちゃったんだ、と放心状態の頭でもそれがわかった。
「……まるほどう?」
無言の自分に、意識を確認するように神乃木が名前を呼ぶ。その声をきっかけに、霞がかかっていた頭が正常に動くようになった。
「……ぅ………」
感じているのとは違う涙が溢れる。
「……ひ、どいよぉ……こんな、のっ………」
ヒックヒック、と喉をしゃくり上げて鳴く。神乃木が顔で受け止めた為に然程濡れては居ないシーツが、涙で濡れていく。
「……成歩堂」
本名を読んで、そっと顔を近づけてみたが、濡れた髪が彼女の頬に当たり、それから逃げるように顔を背けた。完全に腕とシーツで埋めて、自分には何も見せない。
「……………」
さすがに度が過ぎたか、と反省する。最も、それで止めるかと問われたら怪しい所だが。何せ、快楽の虜になった彼女は絶品だから。それも、少し恥じらいを残した方が。
横で泣いている彼女を置いてそんな事を思ってしまうのだから、全く懲りていない。
こういう時は、落ち着くのをまず待とう。それには自分が居ない時と居る時の真逆の場合があるが、今回は傍でじっと待つ事にした。決める基準は何時だって自分の勘だ。
ややあって、クスンと鼻を鳴らした後成歩堂がゆっくり身を起こす。こんなに泣いたのだから、後で目を冷やしてやらないといけないな、と神乃木は考えていた。
「……………」
成歩堂が振り向き、神乃木と視線がある。すると、また、ぶわ、と涙が溢れ出た。
「……馬、鹿……神乃木さんの馬鹿ぁー……どうして、恥ずかしい事ばっかり、させるの……」
まだぐずぐずと泣き止まないが、自分を罵れるくらいなのだから、大丈夫そうだ。泣いている合間に、馬鹿馬鹿と繰り返す彼女に頭に手を置く。今度は、拒まれなかった。ゆっくりと撫でる。彼女は頭を撫でられるのが好きらしかった。それよりは、もっとキスとかを率先して強請ってもらいたいものだと、身勝手な事を思うのだが。
「もぅ……死ぬほど、恥ずかしかったんだからっ……!」
「まぁ、その分とっても可愛かったぜコネコちゃん」
堪能しました、と言うように額にチュッとキスをする。すると、彼女の目にキッとした力が篭る。
「馬鹿ーッ!!!」
寝室内に響き渡るくらい、叫んだ。
しかし何て言うか。相手を罵る言葉に「馬鹿」しか使わないのは育ちがいいというか、可愛いと言うか。
込上げた愛しさを堪える真似はしない。まだ馬鹿馬鹿と自分に向けて喚いている成歩堂を抱き締めた。
「神乃木さんッ!」
自分は本当に怒っているのだと、その腕から逃れようと抵抗する。
しかし元からの力の差と、情後の脱力の為に力一杯の抵抗も、易々と封じられる。
「……うぅ………」
自分の無力感を感じ、大人しくなる成歩堂。そんな彼女を見て、神乃木は楽しそうに笑む。
「可愛いな、お前は」
チュ、チュ、と悪戯するように、顔中キスされる。
――恥ずかしい事をされて何が嫌なのかと言えば、全く自分の反応が予想出来なくて、見っとも無い姿を曝して神乃木に嫌われる事だ。
だから。
例えどんなに恥ずかしい事をされても、その後こうして、可愛い、と言われてしまうと――
(ゆ、許しちゃダメだ!ダメなんだから!)
なんて自分を叱咤している限り、すでに許しているのも同義なのだが。
「やれやれ。さすがに汗かいちまったな」
ベストを脱ぎ、シャツも脱ぐ。ついでにさっさとブラジャーまで取ってしまうと、成歩堂が慌てたように赤くなった顔を背けた。いい加減慣れればいいのに、とその彼女らしさを微笑ましく思った。
「さて、シャワー浴びるか、まるほどう」
「嫌です!一人で浴びます!」
危うく一瞬差し出された手を取りそうになったが、さっき簡単には許さないぞと決めたばかりなので対応は早かった。
「おいおい、つれねぇな。俺だって汗まみれなんだぜ?」
その言葉には嘘は無く、褐色の肌に汗の玉が浮かび、滑り落ちていく。その様子は妖艶だった。成歩堂は一瞬その体を見てしまい、はっとなってぶんぶんと頭を振った。
「だめです!我慢してください!」
早い者勝ちだ、とばかりに成歩堂はさっさと浴室に駆け込んでしまった。鍵なんてついていない浴室を、どう守備するつもりなのだろうか。だから強引に入ってやれない事も無いが、ここは彼女に譲ろう。さっき散々楽しませてもらったのだから、それくらいは我慢しようじゃないか。
さて、とりあえず今は体を冷やすべく、アイスキャンディーでも食べてみよう。
シャワーから上がった成歩堂が、それを見てどんな反応をするのか、今から楽しみだった。
<END>
アイスキャンディーですが、神乃木さんの手作りかもしれませんね。それをコーヒーに入れると美味しいらしいので。
って言うかそれより何か言わねばならない事があると思うのですが、まぁ見逃してくれよ!
エロは楽しいね!(自棄)