法介がボルハチへ行ってみれば、彼は目に見えて泥酔していた。足元に転がる空の瓶は、今日はジュースではなくワインか何かのようだ。ラベルがいつものと違う。
「やられたよ、オドロキくん……」
顔を赤らめた成歩堂が、法介を見上げて呟く。
「やられたって?」
「瓶の中身が、ジュースからお酒に変わっていたよ」
「……………」
きっと、成歩堂の頭の展開では「取り間違えた」という考えは無いのだろう。法介はそう思った。
「……じゃ、帰りましょう。オレ、送ってきますから」
当初の予定としては、法介はここで1日の締めくくりにと成歩堂の顔を拝んでそのまま帰宅する筈だったのだが、すっかり出来上がっている成歩堂を見て「そんじゃ、気をつけて帰ってくださいね☆」とさらりと流せる訳もない。
だって、酔っ払った成歩堂と来たら、顔が赤いのは言うまでも無く目が若干潤んでいて尚且つ息遣いがやや荒い。これで夜道を1人で歩かせたらどんな輩に暗闇の中へ引っ張られる事やらだ。
「立てます?」
「………うん」
返答に若干の間があったが、正体を無くすまでには酔っていないみたいだ。やや足元は覚束無いが、歩行も出来るようだ。しかし、ややフラついて歩くその様は、さっき陳述した成歩堂の容態と合い余って、何だか一発ヤり終えたようだ、と並んで歩く法介はそんな事ばかり思っている。実物を見ているのだから、なお更だ。
(あー、ヤバい。ヤりたくなったかも……)
かも、なんで思った時点ですでにアウトだ。いつもと違うアルコールの匂いを漂わす成歩堂に、法介はTPOが許したのであればもうすっかりする気が十分だ。
夏の夜風は昼に比べれば大分涼しいが、法介の熱を冷ます程ではない。法介は成歩堂を無事に送った後、即行で家に帰るかあるいは途中で公衆便所にでも入って一発抜くべきか、一体どっちが良い選択なのだろうと、さっきからぐるぐるとそんな事を考えていた。間違っても成歩堂には知られたく無い話である。
「…………」
しかし、丁度そんな事を考えて居る時に成歩堂は足を止めてしまった。支える為、手を絡めるように繋いでいた法介も自然と止まる。
「成歩堂さん?どうしました??」
まさか自分の胸中がバレたんじゃあるまいな、と法介は内心ヒヤリとした。成歩堂も人の思考を見抜くのに長けている。実際、成歩堂はじ、とオドロキを見据えていた。その目は据わっているようにも見える。
そして、言う。
「舐めたい」
「は?」
自分に注がれる視線に、もしかして何かを強請られるのかなとは思っていたし、内容のジャンルも合っていたが、いかんせん容貌の種類が可笑しい。路上で呟くセリフにはあまり相応しくない。
やっぱり見た目以上に酔っているのか。法介が今の発言の真意を尋ねる前に、成歩堂が言葉を注ぎ足してまた言った。
「オドロキくんの、舐めたい」
「……………」
そう言った成歩堂の視線は、明らかに法介の下肢へと向いていた。
辛うじて其処の平素を保っているというのに、何て酷な事を言うのか、と法介は一旦引っ込んだ冷や汗がまた沸き起こりそうだった。
「ちょ、ちょっと、成歩堂さん……?」
「うん。そうしよう。それがいいよ」
もしかしたら単に自分の思い違いかもしれない。そう思って尋ねようと思った法介の腕を取って、何やら1人で完結してしまった成歩堂がぐいぐいと連行するように引っ張っていく。
「なななな、成歩堂さぁぁぁぁぁぁん!!??」
夜更けだからと、法介の控えめな絶叫が夜の町に木霊する。
本来であるなら自宅へと通じる道をスルーして、成歩堂が法介を引っ張ってきた場所と言えば、近所のあの公園だった。夜の公園は昼間とは別世界のように思える。
ここの公園は意外と自然が一杯で小さな森みたいな所があり、成歩堂は間違いなくそっちへと向かっていた。
まさか、と法介が瞠目する。がさがさと茂みを掻き分けながら進み、おそらく森の中頃だという地点で、成歩堂は1本の木の前で止まった。そして、1回ぐるりと周囲を見渡す。
「うん、ダイジョウブだね」
にこっと法介を見て無邪気に笑う。法介がまた引っ張られ、背中に木が当たる。
そして、視界から成歩堂が消える。
ふと視線を下に下ろせば成歩堂は法介の前で屈みこみ、ファスナーに手をかけていた。
(やっぱり―――――ッッ!!!?)
法介は心の中で声を上げた。あまりに衝撃が凄まじくて、喉に詰まって口から出なかったのだ。
(こ、こ、こ、コレって青姦ってヤツだよな!!)
法介の今までの人生の中で初体験である。
止める止めないという考えは出ずに、ただどうしよう、とだけうろたえていた。そうしている間に、成歩堂はあっさり取り出して、はくん、と口に含んでしまった。
「ぃっ――――っ!!」
熱くて濡れた口内へ、予感である程度の反応を見せていた自身が包まれ、法介は危うく声をあげそうになる。奥歯に力を入れて口を噛み締め、背後の木に爪を立てた事でとりあえずはやり過した。
「ちょ、ちょっと成歩堂さ………――っぅあッッ!!」
頭を引き剥がそうとしたが、ニット帽がずれただけで成歩堂の位置は変わりなかった。先端に歯を立てられ、その刺激が癒えない内にじんじんする其処を舌がねっとりと舐め上げる。手が引き攣るように動き、ニット帽が成歩堂の頭から完全に落ちる。
「んっ、んっ……んっ……」
一度完全に口に含んでしまってから、唇で扱くように前後に頭を動かす。成歩堂の口内から出される度に、自身が大きくなっていくのを法介は自覚出来た。眼が眩むくらい気持ちがいい。
「〜〜〜だから、ちょっと待ってって!待って、欲しいんです、けどッッ!!ヤバイって!本当に出る!!」
「んー、はひへいいお?」
「咥えたまま喋らないでください――――ッッッ!!」
と、抗議した自分の声の大きさに、今ここが何処であるかを思い出し、慌てて口を手で押さえた。ちなみにさっきの成歩堂のセリフは「出していいよ」である。
いいから早く出しちゃいなよ。
と、実際に言った訳では無いが、その動きはそうも言ってるも同然のように法介は思えた。ねっとりと舌が自身に絡みつき、喉奥で先端が吸われる。その技巧だけでも十分なのに、成歩堂がしているというのが最も法介の理性を激しく揺さぶる。快楽を抑える術なんて知らない法介が、それに抗える筈もなく、成歩堂の望みどおりにその口の中へ思いっきり吐き出してしまった。
「んッ――――!」
おそらく本人は無意識かもしれないが、吐精の瞬間、頭に置いてあった法介の手が力を持って押さえ込んだ。そういう法介の余裕の無さは、成歩堂は嫌いではなかった。むしろ可愛いと思う。
(我ながら可愛がり方が歪んでるなぁ……)
法介の白濁を飲み込みながら、成歩堂はふと思った。
「………はぁ」
吐き出した後の虚脱感に、法介が背を木につけたままずるずると下にずれる。ある程度呼吸が落ち着いてから、成歩堂が尚も自分の足の間に顔を埋めているのに気づいた。どうやら、自身に絡みついた精液を綺麗に舐め取ってくれているらしい。こういう面では成歩堂は物凄く甲斐甲斐しい。思えば彼が自分から動き時なんて、騎乗位くらいかもしれない。そう法介が思った時だった。
「…………」
身を起こした成歩堂は帰り支度を整える所か、パーカーの前を降ろし肌蹴させる。そして下まで脱いでしまった。
「え……まさか最後まで……?」
繰り返し認識するが、ここは夜の公園で屋内なのである。誰も来ないかもしれないが、誰かが来るかもしれない。
「んー……ダメかな?」
と成歩堂は小首を傾げ、法介の手を取ると自分の胸へと触らせた。シャツの上からではなく、その下から肌へ直に、である。しっとりとした肌が法介の触覚から誘う。
「…………」
法介はもう片方の手もシャツの下へと潜り込ませ、シャツを鎖骨のやや下辺り、胸の突起が見えるくらいまでたくし上げた。身体が昂ぶっている事で赤く立ち上がっているそれに、法介は吸い寄せられるように口に含む。成歩堂の身体がひくん、と波打った。
「んっ………!」
胸への刺激を感じ取りながら、腰を摺り寄せて法介のと自分のを一緒に扱く。手に取った時、法介が感じたのが突起を含んでいる口内で判った。すでに緩やかにだが勃ち上がっていたそれは、手で扱いただけであっという間に張り詰めるほどになった。2人分の先張りは片手では零れるくらいで、それを指で掬って成歩堂は後孔を解す。今日はこんな場面だから、ローションなんか用意してないのだ。
「……ん、……オドロキくん……」
囁くような声で名前を呼んで、胸を弄っている法介の肩をそっと押す。どうやら、準備はいいようだ。
「……挿いりますか?」
ローション無しでするのは初めてだった。あくまで法介は、だが。平気だよ、と成歩堂はそれに呟くみたいに返事をして、先端から零れる液を法介自身の全体へと擦り込む。粘着質なものを混ぜるような、何とも形容し難い音がした。
「っ………は、ぁ……」
やはりローションとは質が違うらしく、いつものようにスムーズな挿入は難しそうだった。だいたい、野外で前戯もままならなかった。……まあ、ベットの上だとしても、法介の腕だけでは受け入れられるくらいに成歩堂の肢体を蕩けさせる事が出来るかも疑問だが。
法介の先端を後孔が少し飲み込んでは、中の潤いが足りないのかそれ以上入らず上へずれてしまう。法介より成歩堂の方がじれったそうだった。法介も、先端ばかり刺激されて、もどかしさを募らせる。
ここで成歩堂が諦めたらどうしよう、という不安を法介が覚え始めた頃だった。ようやく、法介を飲み込み始めた。くぷ、と先端の更に先の方だが、ちゃんと成歩堂に挿っている。
「ぅ、ん……んっ………」
僅かながらに挿った事を確認した成歩堂は、手を前に回して自身を扱き始める。前への刺激で後ろを解しているのだろう。言ってくれればやるのに……と思いながら自慰のような光景に、法介は釘付けだった。
「はぁ、は……ぁ――――んっ……」
先の太い所さえ飲み込んでしまえば、後は殆ど惰性だった。あんなに苦労していたのが嘘のように、すんなり飲み込んでいく。ずず、と法介が挿っていくのに合わせ、か細い嬌声が成歩堂から漏れる。
「………はぁ、」
最後に一息ついて、成歩堂が止まった。全部中へ飲み込んでいるのは本人の法介が一番解っている。
(あー、気持ちいい……)
ゆっくり息を吐き出しながら、法介は成歩堂の内部を味わっていた。口もいいけど、やはり胎内の方が気持ちいい。まだ動いていないのに、蹂躙されるのに備えるようにヒクつく内部が締め付けてくる。それに、フェラしてる時より相手がよほど感じているのも、こちらの気持ちよさを倍増させる要因かもしれない。
きゅ、と中が締まったのが判った。動くんだな、と法介は思った。
「くぅ……ん……んっ……」
少し顔を顰めて、成歩堂がゆっくり上下する。中で法介が擦れる度に、先走りが中に擦り付けられるのか、徐々に動きが大きくなって行く。その反動で成歩堂の前髪がぱらりと落ち、動きと合わせて撥ねる。
「あ……は、…は………ぁん、ん……」
ゆさゆさと揺れる度、微かな声が漏れる。それがもっと聴きたくて、成歩堂の腰へ法介は手を伸ばす。その期待に成歩堂の目が妖しく光ったように思えた。
「あっ!!」
成歩堂のリズムを崩すように、法介が強制的に腰を下ろす。その衝撃に、成歩堂が甲高い声を上げた。
「あっ、あっ……っん、オドロキく……あぁぁッ!!」
丁度感じる箇所を刷り上げ、背を反らして成歩堂は大きく啼く。その声の大きさに、少し法介が慌てる。
「成歩堂さん、声ちょっと大きい……」
「だ、だって……無理、……あ、ぁッ!あぁぁぁッ!!」
動きがさっきの形に固定されたのか、成歩堂の弱いポイントばかりを突き上げるのだ。成歩堂だって声を抑えないとと思うのだが、その合間を縫うように嬌声が勝手に出てくるのだ。
感じているのを抑え込むのが無理なら、声の方をなんとかするしかない。法介は自分の持ち物を振り返ってみる。人の口を封じるくらいの手頃な大きさの布。ハンカチは生憎持っていない。と、なると。
法介は自分の胸元に手をかけた。ネクタイがしゅるりと解ける。
「これ、口に咥えれば……」
ネクタイを差し出すと、成歩堂がこっくり頷き、口に咥えた。これで声の問題はクリアになっただろう。法介は追い上げるつもりで腰の揺さぶりを激しくした。
「――――ッッ!!」
成歩堂の声の無い嬌声が聞こえたような気がした。変わらず感じる箇所を擦るのか、意思ではなく強い快楽を感じた身体の動きで頭が振られる。ぎゅう、と閉じられた目から涙が滲んでいた。
(……何だか、物凄くいけない事をしている気分だな)
口を封じられ、外で犯されている成歩堂を見て、法介は変に昂ぶってしまう。誰かが来るかもしれないという環境もそれを手助けしていた。背徳感が増すとその分快感も増長されるのだろうか。媚薬でも飲んだみたいに頭の芯が甘く痺れる。
「んんっ……ん――――!!」
くぐもった声で成歩堂が切なく啼く。その声色は、限界が近いのを報せていた。先から滲むのに、白いものが混じり始めている。法介も、そろそろ2度目の絶頂感を感じ始めていた。昇り詰める前のあの予感だ。
「っ……オレ、もうイキます、よ……」
いいですか?と窺うように成歩堂を見ると、それを促すように何度も成歩堂が頷く。それを見て、法介は堪える事無く、今度は成歩堂の後ろへ自分の熱を注ぐ。それに煽られるように、成歩堂も自分の手で白濁を受け止めていた。
「ん……あれ、ぇ?」
間の抜けた声で成歩堂がむっくりと起き上がる。完全に寝惚け眼の様子に、法介は苦笑して頬にキスをした。
「……オドロキくん、ずっと一緒に居たの?」
「って、置いて帰れる訳ないでしょうが!」
事が終わると、酔いと心地よい疲労感からか、成歩堂はそのまま睡魔に座れるそうに眠ってしまった。法介の体格では成歩堂を担いで帰るのは難しく、仕方ないのでここに留まっていたのだ。時刻は深夜から朝方の境に移り、みぬきを呼び出すわけにもいかない。衣服を整えた今であれば、誰かに見つかっても酔っ払いの解放でいい訳出来るし。
「別に冬じゃないんだから、死んだりしないよ?」
そうじゃねぇよ、と本気できょとんとしている成歩堂に法介は胸中で物凄いツッコミを決めていた。
「オレは成歩堂さんの客じゃなくて彼氏なんだから、終わったらハイさよならなんてしないんです!」
「……………」
成歩堂はそのセリフに1回瞬きをし、それから目を細めて笑う。そして法介の頬へ、ちゅっと挨拶程度のキスをした。
「そうだったね。ごめんね」
一体何に対してのごめんなのか。法介は気になったが、まあこの場は保留にしておこう。
「オドロキくん、もう事務所に泊まって行っちゃいなよ。どうせ電車もまだ出てないよ」
みぬきは僕が適当に誤魔化すからさ、と言う。
「それと、ネクタイも。今度の休みに、新しいの買ってあげるよ」
いつも胸にある青いネクタイの無い法介に、何処か違和感めいたものを感じながら、成歩堂は苦笑して法介に言った。
「えー、いいですよ、そんな。他にも持ってますから」
「でも………」
「でもも何もじゃありません!こんな時だけ大人ぶらないでください」
誘ったのは成歩堂の方だか、それに乗ったのは法介だ。どっちに責任がある訳でもない。2人でする事なのだから。
「そう?」
「そうです」
力いっぱい断言する法介に、成歩堂は微笑み、法介の耳に近寄り囁いた。
「じゃ、また外でHしようね?」
「!!!!!」
そのセリフに、法介は危うく排水溝の溝に足を落としそうになった。
<おわる>
他CPだと「セックス」と表する所をオドナルは「H」と書きたいていう。どーでもええわ。
何か口封じてばっかですね……何故。
実はもっと成歩堂さんをあんあん言わせたいんですよ。