キューピッドになりたい。
御剣は自宅住まいの大学生なので、一人暮らしをしている部屋に来るだけで何かこう、ちょっとしたイベントみたいでワクワクしちゃうのだ。
しかも、幼馴染にして親友の成歩堂の部屋なのだから。
今日は相談したい事があるんだ、と御剣は部屋に招かれた。成歩堂の所に行くと言ったら母親が手土産をくれたので、それを持参して。
「………あのね、」
マグカップを両手で包みこむようにしている成歩堂が、まるでささやくような声で言う。
なんだ?というような御剣がしたら、成歩堂が言った。
「……好きな人が、出来たみたい……」
仮に蚊が喋れたのならこんな音量だ、というくらい小さな声で言う。そして、トマトのように真っ赤っかな顔で。
「ま…………そうか」
御剣は「またか」という言葉を飲み込む事に成功した。ちょっと露出しちゃったけど。
別に成歩堂は浮気性ではない。ただ、恋愛というかお付き合いが長続きしないだけだ。その理由は御剣にも、成歩堂本人にも解らない。遊ばれてる100%の矢張とは違い、ちゃんとお互いの意思が疎通して付き合っているというのに。まあ、それはさておき。
「……でも、今回は、ちょっとパターンが特別っていうか………」
「うム?」
ごにょごにょ、と成歩堂が気になる事を言う。少しの間を開け、成歩堂は意を決して言った。
「男の人なんだ。その人」
「ほう」
「…………。それだけ?」
羞恥が顔色以外にも回った成歩堂の双眸は潤んでいる。その様子は劣情を駆り立てるような仕草ではあったが、そこは御剣なので、可愛いな、て終わった。
「それだけ、……とは?」
きょとんとしつつ、御剣が問いかける。
「……男同士なんて気持ち悪い、とか……そんなの錯覚だから止めとけとか……」
再びごにょごにょと言う成歩堂に、ふむ、と御剣は考えて。
「世間一般の認識は知らないがな。少なくとも私としては、愛の形は様々なのだから同性に向く事があってもちっともおかしな事ではないと思うし、それに錯覚を含まない恋愛があるというなら、その事例を見せてもらいたいものだな」
暗に、「その気持ちが今までのとどう違うのかね?」と仄めかしてみれば、成歩堂はようやく力を抜いたようにふふっと笑った。
御剣はふむ、と考えて、室内を見渡す。部屋の隅には、防犯にでも、と御剣が贈った鉄バットがある。
御剣はそれをす、と差し出し。
「そういう事なら、これで後ろからガツンといったところを一方的に親密になってはどうだろうか」
と、しれっと言った。成歩堂はそれに「うん、それはナイスアイデア☆」などと同意する筈もなく(矢張ならしたかもしれないが)。
「どうだろうかじゃない―――!!犯罪だよ、それ!何で検事の君がそんな事言うの!!!?」
「ならば、一服持ってだな。上に圧し掛かって一見情事でもしているような証拠写真を取り、その責任をと」
「それもダメ――――!!てかそれじゃ僕が責任取る方だろ!!
てかなんでそんな羅刹的な方向に行こうとするの!?」
「……………」
御剣はこの時2つ思った。
まず、今までは普通のやり方をしていて失敗してるのだから多少過激なやり方をした方がいいんじゃないか、という事。
さらに、同性相手なら子供が出来ないんだからいいじゃないか、という事。
しかしいずれも口に出せば成歩堂がとても怒るという事は解っていたので(怒るっていうか……)御剣は沈黙した。
「で、相手はどこの馬の骨なんだ」
「それ、どっちかと言えば悪口だよ、御剣」
おそらくそれと解らないで言ってるだろうから、成歩堂は指摘してあげた。
「……あのね、千尋さんの先輩で……神乃木さんって言うんだ」
(神乃木……?)
御剣は記憶を穿り返す。そういや、この前モモノキだとかカキノキらしきイントネーションの弁護士と会ったような会ってないような、うームまあ別にどっちでもいいや、みたいな。
それはそうと、綾里千尋弁護士の先輩というからには弁護士であるのは相違無い。くっ、同じ法律家か、これは面倒だ……!と御剣は思った。何がどう面倒になるかは、ここでは伏せておく。
「凄く、格好いいんだよ。背が高いし、顔も格好いいし」
はにかんで成歩堂が言う。相手が同性になっても面食いなのは相変わらずだな、と御剣は思った。
「弁護士としても凄いんだよ。難しい案件一杯抱えても、それを周りに気取らせないくらいスマートにこなすし」
その時の神乃木でも思い浮かべているのか、成歩堂は夢心地な表情で頬を染める。
「意地悪も言うけど、結局優しいし……」
惚気ていた成歩堂は、そこでアンニュイになった。
「……きっと、女の人にもモテるんだろうなぁ……」
だって男の僕が惚れちゃったくらいだもの、と自嘲的に呟いた。
「成歩堂………」
落ち込む姿を見るのが辛い御剣は、そっと声をかける。
「そんな事を言うな。君は、その辺の女性よりもよほど魅力的で可憐だ」
「……うん、ありがと」
成歩堂はそれを慰めの社交辞令だろうと思って、力無く笑った。
実は御剣は思いっきりの本音を、力強く語っていたのだが。まあ、双方の食い違いを残しつつも会話が動く。
「……千尋さんも美人だから、並ぶととてもお似合いでさ……付き合ってるんですか、って訊いたら二人とも、凄い速度で否定したけど……今は違っても、この先どうなるか解らないし……」
「そんな”かもしれない”を考えて居てもきりがないぞ、成歩堂。君のその推測を裏付ける証言や証拠はあるのかね?無いなら、考えるのは止めたまえ。建設的では無い」
「……そうだね。ごめん」
「ごめん、もこの場では適切ではないな」
御剣がきっぱり言う。成歩堂は、少し考えて言った。
「……ありがとう、御剣」
そう言って、微かに微笑んだ。ようやく、成歩堂は本当の笑みを浮かべたようなので、御剣も嬉しくなってわずかに微笑む。元が整っている為、とても美麗な微笑みであるが、それを見た事があるのは成歩堂だけだ。この場に限った事ではなく。
「それで?」
「うん?」
「相手に、告白はするのかね?」
御剣のその言葉に、一度は引っ込んだ顔の熱が、再び上昇したようだった。成歩堂の顔がみるみる赤くなる。
「こっ、こっ、こ、告白って、そんな!」
とんでもない!というように真っ赤な成歩堂はぶんぶん手を振った。
「好きなのだろう?」
「そ、そうだけど……」
「だから今宵、私と奇襲作戦を相談したいと乞うたのではないのか?」
「……告白するにしても、実力行使はちょっと嫌だな……ていうかそんな相談じゃないから……」
成歩堂は手をパタパタと振った。
「安心したまえ。恋と戦争は何をしても正当だという海外の諺がある。原文で言えば”All is fair in love and war”だ」
御剣は完璧な発音で言った。アドバイスとしては完璧にはほど遠いが。
「でもさ、やっぱり告白とかして今の雰囲気が崩れるのは嫌だし……
今日、君に相談したのは、僕が諦めるにしても玉砕するにしても、僕が神乃木さんが好きなんだって事、他に認めてくれる人が居てくれたら、まだ救われるかな……って思って。……ごめんね、勝手に巻き込んで」
成歩堂は自己嫌悪に、ちょっと沈んだような顔をした。御剣は、それに優しく、そんな事を気に病むな、と微笑んだ。
その笑みに勇気づけられたように、それでさ、と成歩堂は続ける。
「神乃木さんも、刑事事件が多いからさ。もし君と当たった時なんかは、その時の様子とか教えて貰ってもいいかな?」
「それくらい、お安い御用だ」
御剣は真面目に力強く頷いて、御剣らしいその反応に、成歩堂も少し噴き出したのだった。
さて、そんな日のあった後日。
ここは検事局であり、亜内検事のデスクである。なので、そこに座っているのは亜内検事だ。何も可笑しくは無い。糸鋸や厳徒が座っていたら騒いでくれてもいい。
亜内は、ふっふっふ、と含み笑いをしながら、リーゼントっぽい前髪(?)を掻き上げて(?)いた。今回の事件は、検察側に圧倒的に有利なものだった。で、自分の勝利を確信した亜内は、今から勝利に酔いしれている訳だ。しかも、今回の相手弁護士は、巷でキャーキャー注目されている神乃木弁護士。そんな相手に引導を叩きつけれると思うと、女性職員からマイナスの方面でキャーキャー言われている亜内の含み笑いも一層濃くなろうというものだ。
(今に見ていなさい……今日の主役は、私ですっっっ!)
と、胸中で叫んだ亜内は、自分がもっとも決まっていると思う表情でシャキーンと決めた。ギャラリーが居ないのはどうでもいいようだ。
そして。
「失礼する!」
バーン!と、厳かな管楽器の協奏曲でもBGMにしてそうな堂々たる雰囲気で、御剣が登場した。そして、御剣はツカツカツカ!と亜内検事の席へと真直線に進む。
「なっ、ななななな、なんですか御剣くんっ!?」
亜内はビビリながらも訪ねた。しかし御剣は、亜内当人には目もくれず、その机に置かれている書類、つまりこれから彼が行う審理の詳細の書かれている文面を見た。そこには、担当弁護士に「神乃木荘龍」と書かれている。
(ジンノギ……ではなく、カミノギでいいのだろうな。これが成歩堂の恋の相手に違いない。うム、所属事務所も年齢も合っている)
うムうム、と御剣は自分の不可解な行動に恐れ戦く亜内をほっといて頷いた。そして。
「亜内検事。この審理、私が代わって差し上げよう」
上から目線で御剣が言う。
「えっ……えええええっ!一体、何故に!」
亜内は尤もに絶叫する。しかし。
「この私が代わってやると言っているのだ。つべこべ言わず、従っていた方が狩魔の看板も暴れずに済むぞ?」(ぎろり)(←睨んだ)
「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
ざぁーっと青ざめた亜内の首は、勝手にこくこくと上下に動いて同意を表していた。それを見た御剣は、「解ればいいのだよ」と言いたげに呆れた顔を作り、裁判に使う資料等を掻っ攫って部屋を後にした。
(な、何だったんだ!)
残された亜内検事はガクガクと震え、御剣の理不尽な仕打ちに激怒するよりも、今生きている幸せに安堵していた。
裁判はいつも傍聴人のどよめきから始まる。が、今日はいつもに増してその音量が大きかった。
一番高い場所に座る裁判長が、目をぱちぱちと瞬きにして検事席に佇む御剣を見やる。
「御剣検事……どうしてまた、急に貴方がこの裁判を担当する事になったのですか?」
御剣は書類を読んでから知った事だが、今日の裁判は二日目だったのだ。なので、最中の突然の検事変更に傍聴人も戸惑いを見せる。しょぼい中年オッサンが昨日出たかと思えば、今日煌びやかな衣服を纏った青年が出てきたらそりゃ驚く。
なんだ、昨日もこの男は裁判していたのか。ちっとも知らなかった。まあ、成歩堂から話を聞いたのが昨夜なのだから仕方ない、と他者から見れば何か仕方ないのか全く持って不明の理由にて、御剣(だけ)はこの問題を終わらせた。
いきなり変わった検事に動揺する中で、平然としているものが若干2名ほど居た。1人は勿論御剣で、もう1人はその対面に居る神乃木だった。
神乃木は以前御剣と当たった事があるのを覚えているのだ。まだ未熟の域を達してはいないが、理論展開が実にスムーズなのを神乃木は評価していた。なので、神乃木はあの時のボウヤとまたやりあえるとは法廷の女神も粋な事をするもんだぜ、とほくそ笑む。この審理を定めたのは法廷の女神では無く御剣の親友であるとも知らないで(まあ、その親友当人も知らないだろうが)。あとついでに、神乃木は相手が自分の名前をあやふやでアバウトにしか覚えてないのも知らないだろう。それでいい。世の中には、知らない方が絶対にいい事もある。
神乃木は、余裕たっぷりに言う。
「俺は構わないからさっさと始めようぜ、じいさん。
例えカップが変わったとしても、コーヒーが紅茶になった訳でもねえだろ?」
「しかし器が変わると風味ががらりと変わるぞ」
「…………………」
「とりあえず、事件概要のお浚いでもしておこう。えー、被告人は6日夕方、自分の部屋にて不倫相手を殺害し――」
痛い所を指摘され神乃木が沈黙したのをいい事に、御剣はさくさくと陳述をし始める。
「――その犯行は自分勝手な理由により、あまりにも悪質。よって検察側は、殺人を主張する!」
ビシー!と御剣は指を突きつけて言った。
「……まあ、それは昨日も聞きましたが……神乃木弁護士、どうですか?」
裁判長が神乃木を伺う。神乃木は、シュッと流れてきたカップを受け取り、ごくりと一口飲んだ。御剣はそれを見て「あれの中身を墨汁を変えたら、果たしてどんなリアクションをするのだろうか……」と気になったので、今度やる事にした。決定した。
「クッ……男が一度決めた事を、簡単に覆しちゃいけないぜ。俺の意見も――」
「ところで貴様には特定の恋人でも居るのか、神乃木弁護士」
御剣がざっくりと神乃木にカットインした。ので、神乃木は危うくずっこけそうになるのを、ハードボイルドの意地で堪えた。
「はあ?いきなり、何を言い出すんだアンタは?」
「何、自身恋愛の縺れの経験の無い者が、不倫関係の果ての惨劇であるこの事件にどう口出し出来たものだろうか……と、ふと思ってな」
御剣がなんだか尤もらしい事を言ってるが、勿論真の目的は成歩堂の為の、神乃木の素行調査である。とりあえず、恋人の有無でもしっかり確認しようと思った訳だ。
神乃木は、御剣にニヤリと面白そうに笑ってみせた。
「ほぉ?ならボウヤは、苦味しか無いブラックコーヒーを飲み下すような愛でも体験したっていうのかい?」
「生憎私は紅茶党だ。コーヒーは好かん」
「いやいやいやいや。そういう事を言ってるんじゃねえんだぜ、もしもし?」
「ええい、いいからさっさと聞かれた事には答えんか!イエスかノーで済む質問に手間取らせるな!」
「そうですな。弁護人、速やかに答えなさい」
バーン!と机を叩いて憤った御剣に、なんでか裁判長が味方した。俺は孤独なのか、ロンリーなのか、と自問自答しながらも、神乃木は自分らしくその質問に答えてやる事にした。ちょっぴりピンチなのでふてぶてしく笑いつつ。
「居るといや居るだろうし、居ないと言えば居ないだろうぜ。まだ見知らぬ誰かに、運命の女神が潜んでいる可能性を配慮したら、な」
「つまりそれは、仮に現在恋人としている人物が居たとしても、他にいい人を見つけたら簡単に乗り換えるという事か?
不誠実ここ極まれだな、全く………」
へふぅー、と御剣は心底軽蔑した目で溜息した。
「不誠実ですねぇ、神乃木くん」
ほふぁー、と裁判長も溜息した。
「ママー!あの人、不誠実だよ!!」
傍聴人の子供も騒いだ。
「いいだろうが別に俺が恋愛に対してどんな姿勢で構えて居ようがー!今は裁判だろ!裁・判!!!
異議を飛ばそうぜ!!異議を!!」
神乃木はカップを机にダンダンと打ちつけて喚いた。喚かずにはいられない場面だった。
「弁護人は不必要に声を荒げて威嚇するのを止めて貰えないか」
「うるっせーよ、バカ!!!!」
冷静に諌める御剣に、神乃木はちょっぴり泣いた。
「御剣くん……さっきの裁判。あれは何だ」
威厳ある顔をし、まるでOK牧場のような内装の部屋に居座るのは直斗で、その前には御剣がいかにも呼び出されました!って感じて佇んでいた。
「何か、問題でもあったでしょうか」
「あったでしょうか、じゃないよ!」
しれっと言った御剣に、直斗が激昂してバン!と机を叩く。
「あんなんじゃ全然だめだ!もっとセリフは支離滅裂に!主張はいきなりころっと変えて、相手の神経逆撫でするタイミングで正規の流れに持ち運んで、もっと翻弄しなきゃ!」
「おい、待て」
……まあ、ちょいちょい繰り返し神乃木のプライベートに突っ込む異議を繰り返したのは、良かったかな。でも今度は派手なカマかけてやれ。意外と動揺激しいから。あいつ」
「おい、ちょっと待て」
「……さっきから待て待て煩いなぁ。
何だよ神乃木。オマエが御剣くんに注意しろっていうから、こうやって指導してるんじゃないか!」
「ああ、そりゃ済まなかったな。「注意」の取り方に俺とお前とで大きなブレがあるのを失念していたみたいだぜ」
ぷんすか怒る直斗に、神乃木は冷静に切り返した。勿論、この静かな物言いは激怒を通り越した末の果てである。
「セリフを繰り返しちまうようだがな、さっきのは本当に何だったんだありゃぁ。何故に俺の個人情報を聞き出そうとする?
新手の弁護士苛めか?」
「……おお、いいねぇ、それ」
「あたかもいいアイデア貰ったかのように指鳴らしてんじゃねえ直斗」
頂き!って感じな直斗に神乃木がすかさず言った。当の言われた御剣は、ムぅ、と口をへの字にしていた。その態度は言いたくない事、つまり理由があると言っているようなものだった。
「何だ、コラ。黙ってちゃ解らないだろーが!理由があるならとっとと言え!」
と、御剣に言いつつ、神乃木さんは何だか小学校低学年の担任教師みたいな気持ちになりましたとさ。
「貴様の個人情報を知る必要があるがそれは貴様には言いたくはない」
「さすが御剣くん。完璧な理由だね」
「どこがだ――!肝心な所に何一つ触れてねーだろ―――!!!」
真顔でしみじみと頷く直斗に、すかさず神乃木がずびー!と突っ込んだ。
そして、冷静を取り戻すために、一度深く深呼吸した。
「あ。今、落ち着こうとしてるだろ」
「………………」
深呼吸する神乃木に無神経にズヴァリと直斗が当ててそれにまたイラッとした神乃木だが、どうにか怒りを爆発せずに済んだ。
「……まあ、理由があるなら、とりあえず納得してやる。
で、そういう時なら直に俺に訊ねろ。間違っても裁判で聞きだそうなんてするんじゃねえ」
「………………」
「まだ何か言うことあんのかい」
「……プライベートにまでこんなひげ面を拝めというのか……」
苦虫を100匹噛み潰したよーな顔で御剣が呟く。その横で、直斗がうんうんと頷く。
「ああ、それは酷だねぇ。苦行だねぇ」
「こっちだって自分の時間削ってそのヒラヒラ拝みたくねーっつーんだよ!!!!」
神乃木は吠えた。自分の為に。
そしてさらに後日。
さっそく御剣は、成歩堂に「裁判で神乃木弁護士と当たった」と言って対面していた。
「わぁ、早速なんて嬉しいな!ねえ、神乃木さんどうだった?どんなだった?」
目を輝かせる成歩堂の期待を受け、御剣は先日の記憶をほじり返す。
「………………」(←ほじり返している)
「自分で傍聴に行けるといいんだけど、僕も弁護士になる勉強でいっぱいいっぱいで……いつか、神乃木さんの助手が出来ればいいな。
で、神乃木さん、どうだった?」
改めて聞かれ、御剣は一回頷いて答えた。
「コーヒーを噴いていた」
「……………。へっ?」
著しく人権を傷つけられていると知らない神乃木は、その時やっぱりコーヒーを飲んでいたという。
<おしまい>
御剣って恋人だとヘタレかもしれないけど、親友のポジションにとどまったらすっげー無敵だと思うんだよな、という話でした。
一応カミリュウだけどな!
神乃木さんにきゃっきゃ騒いでるリュウちゃんは書いてて楽しいです。
そんなリュウちゃんの手助けになりたいとずれた方向で発奮するミツルギくんも書いてて楽しいです。
でも一番楽しいのは振り回されっぱなしで不幸のサテライトキャノンを食らってる神乃木さんです。ワーイ!