ペニントン館
僕と出会う随分前に。
神乃木さんは、遺産として古い小さな洋館を譲り受けたのだそう。
「俺が持ってても持て余しちまうだけだから、いい加減処分しようかと思ったんだが、アンタが元役者希望と聞いてな。なんだか舞台みたいな家だし、ああいう場所が好きかと思って取っておいたぜ」
今度の休みに来るといいだろうぜ。
俺は一足早く先に行って、住めるようにしておく。
そうして、一足早く行った神乃木さんは。
その館のバルコニーから転落して、僕より大分先に亡くなってしまった。
そんな訳だから、僕は田園風景に似合わない喪服を着て、二人で来る筈だった洋館に一人で来ている。
……なんて酷い休暇だ。
目の前にある洋館は、大きさとしてはそんなに特異ではない。その辺の家よりやや大きいくらい。
それでも神乃木さんが舞台っぽい、と証したように、なるほど、本場の大きな洋館の一角を切り取っていい具合に縮小した感じになっている。母屋(と言っていいのだろうか。洋風の家なのに)の横には塔のような建物が寄り添っている。その中は螺旋階段になっていて、そして神乃木さんが亡くなったバルコニーに通じている。
良さそうな家だな、と僕でも思う。
神乃木さんと一緒に来れたら、もっと最高だっただろう。
…………
……中に入ろう。神乃木さんを思い出すのは、それからでもいい。
ぎぃ、と少し錆びたような門を押した時だった。
「ねぇ、そこの君?」
とか言う声がしたのは。
しかも何と言うか、僕に向けたものだったみたいだ。
「………。何の用ですか?」
一瞬対応が遅れたくらいは、妙な怪人物だった。妙じゃない怪人物が居るのか、と訊かれると困るけど。
前髪の一部が金髪に染めてあるかなりのクセ毛、そして目立ちすぎる下睫、何の意図があるのかしらないけど、首には長いマフラーを巻いている。全体的に妙に馴れ馴れしくて厚かましいオーラを醸しながら、僕より数年は年下だろう彼が近づいてきた。
「いけないな……この館は不吉な所だよ?近づかない方が賢明と言っていい。
現にこの前、此処に来た男が謎の転落死を遂げたのを知らないのかい?」
と言って、いかにも親切で言ってあげてるんだよ。感謝しなよ、とでも言いたげに見詰めてくる。
「はぁ、そうですか。でも僕、そういうの気にしないんで」
さっさと門を開いて、そして相手を押し出すように閉めた。「ちょっと待てよ!」とか叫んでいるけど、無視!
「……なんだよあれ、感じ悪いな……」
思わず声が出る。
僕にそんな義理も権利もないのかもしれないけど、軽々しく神乃木さんの死を口にして欲しくなかった。
ドアノブはノッカーがついたちゃんとしたものだったけど、生憎中に誰も居ないのでそれが活躍する事はない。
さっきより倍、思い感触と錆び付いた音を纏わり付かせながら、洋館への扉が開く。
ギギギイイ――――………
中は電気がなくて暗い。でも、段々とそれに慣れて中の様子が見えるようになった。
…………
うーん……何ていうか、コレは……
今日は神乃木さんを悼んで静かに泣くつもりだったんだけど……
天井には蜘蛛の巣。床には塵。壁には埃が纏わり付いている。
足を一歩踏み入れただけで、もわっと吹き上がるくらい。階段の手すりに手を置くと、それだけでまた埃が舞い上がる。
「……………」
試しに、部屋のひとつに入ってみる。ここも玄関ホールと似たり寄ったりな感じだった。
ここも。
ここも。
ここも………
……………
どうやら、神乃木さんは手入れをする前に亡くなってしまったようだ……
ダメだ。
こんな環境じゃ、とても思い出に浸れそうもない!いくら僕が掃除嫌いでも、限度ってものがある!
こんな所で泣いてたら、埃が肺に詰まって死じまうよ!
……仕方無いなぁ……
自分の部屋だって、滅多に掃除なんてしないのに。
僕は上着を鞄に詰めて、袖まくりをして掃除道具を探した。
……こ……このくらいでいいかな……
あー……疲れた……
ピカピカとは言えないけど、大分綺麗になった床に腰を降ろす。
でも凄く疲れたその甲斐あってか、大分見れるようにはなったぞ。うん。
これが、自分で自分を褒めたい気分ってヤツだな。
さて、これでゆっくり泣けるだろう……と思って鏡を見たら。
塵と埃が汗でくっついた、なんとも薄汚れた顔。
……………
僕は別に、特に綺麗好きって訳じゃないけど……この顔もないよな。やっぱり。
こんな顔で泣かれた方も迷惑だ。
幸い……と言うか、水や電気はもう通っている。神乃木さんはその手続きはもう済ませていた。
僕は荷物の中からバスセットを取り出すと、浴室へと駆け込んだ。
「っあー!すっきりした!」
思いっきり汗をかいた後のシャワー程、気持ちいい物はないよね!
さっき掃除した部屋の一つに入り、ベットにダイブした。なんとこのベット、天蓋つきだ。と、言っても蚊帳のようなヤツじゃなくて、何かベットヘッドが発達したような感じだけど。
「ふー……」
ごろん、と仰向けになる。視界の横に見える出窓の向こうは、すっかり夜の帳が落ちていた。
……これで、ゆっくり神乃木さんを想って泣ける。
そう、思ったのだけど。
掃除という重労働は僕の体力を確実に磨耗していて、おまけにシャワー上がりと来て。
泣くために降ろした瞼は、そのまますっかり眠りに落ちてしまった。
「アンタはまだ大分コネコだが、骨太だ。いざとなったら俺が居なくても大丈夫だろうぜ」
「……え。神乃木さん、何処かに行っちゃうんですか?」
「いや、そんなつもりは無ぇぜ。だがな、人生ってのはこのカップの底みてぇに先が見えないものだからな」
「そんな不吉な事言わないでくださいよ。縁起でもない」
「はは。悪かったよ」
そうだよ。そんな不吉な事言うから、実現しちゃったじゃないか。
「……神乃木さんの……馬鹿……」
そう思った時、何か部屋の外で足音がしたような気がしたけど、この家には僕しか居ないんだから、気のせいだよな。
……あー、いい朝だ。
思いっきりよく寝ちゃったよ。
すいません神乃木さん、でも昨日は疲れ過ぎてしまって、しっかり泣く気もおきな……
……あれ。
出窓に座って庭を眺めていたら、誰がこっちに来ている。それは昨日の失礼な男だった。
「一体何の用ですか?」
ある程度近づいた来た時、牽制のつもりで言う。これって、思いっきり不法侵入なんだけど。
「いや、なに。ノッカーを叩いたんだけど、何も返事が無かったからさ」
と、ひょいと肩を竦める。いちいち動作と口に浮かべる仕草が鼻につく人だなぁ。
「どうだい。さぞかし恐怖の一夜を過ごしたんじゃないのかい?」
「いえ、別に」
僕は素っ気無く言う。
男は「ほーぅ」とか奇声のようなものを上げて、竦めた肩で両手を広げる。
「しかしこの家の中は気味の悪いものだっただろう?
かび臭い空気、厚く積もった埃の山、天井にめぐらされた……」
「蜘蛛の巣も埃も、全部掃除しましたけど、何か?」
僕のこの行動は相手にとって予定外だったみだいで、男がグッと言葉に詰まってうろたえた。
「し、しかし……そう、夜中は奇妙な音とかが……!」
「さぁ?僕、ぐっすり寝てましたから」
そう言い返すと、相手はますます言葉に詰まった。
「……ふ、またそんな強がりを……」
口元引き攣ってますけど、貴方。
「で、結局なんの用なんですか?」
さっさと済まして、さっさと退散して欲しいんだけど。
「そうだね、率直にに言わせてもらおうじゃないかい?こんなユーレイ屋敷、早い所売り払った方が君の為だ。
そう、なんならボクにでも……」
「へぇ、ここが欲しいんですか?
だったら何かとりえがあるんですね。教えてくれませんか?」
にこっと意図して笑顔を作ってみる。これには相手があからさまにうろたえた。
「う、いや、別にとりえといって……ま、また来るよ」
そして実にぎこちない挙動で立ち去っていった。最後に浮かべた変な顔は、余裕の笑みでも見せたくて失敗した結果だろうか。
ふん、おとといおいで、だ。いやなヤツ……
と、舌を出して男を見送った後、ぐぅ、と腹の虫が空腹を主張した。
……よく考えたら、こっちに来てまだ何も食べてないし、お腹も空くよな……
よし、買い物がてら、情報収集だ。ここの噂を、聞いてみよう。
数件店を巡って判った事がある。ここにユーレイが出るなんて噂は、嘘っぱちだって事が。
あの館の当主は少々変わり者で浮世離れしている者が多いけど、皆気のいい人達ばかりだったそうだ。遺産であそこを譲り受けたというのだから、その当主ってのは神乃木さんのご先祖様達なんだろう。変わり者だけどいい人、という評価には思いっきり賛同したい。本当はいい人だけど変わり者、なのかもしれないけど。
それにしてもあの男。一体何がしたいのか全然判らないけど、迷惑だってのははっきりしている。
買うものは買って、さて館に戻ろうか、という時だった。
「あげる!」
と男の子がいきなりやって来て、手に何かを押し付けて去って行った。
何だ?と思ってみたら紙切れで、文面には要約して「あの館から出て行け」という事が禍々しい言い方で記されていた。誰が、なんて、あの男に決まってるんだろう。
本当にどういうつもりなんだろうな。嫌がらせにも程があるよ。人をからかって遊ぶなんて趣味が悪い。神乃木さんだって似たような事はするけど、後味の悪い事は絶対しなかった。
館に着き、荷物を片手に扉を開く。
と。
「……う、わっ!」
昨日あれだけ掃除したはずなのに、またしても埃の大群に見舞われてしまった。
これもやっぱり嫌がらせの内か?あの男、部屋の内部を知っているような口ぶりだったし……
ふん、意地でも出て行ってやるか。
そもそも、昨日でもあの荒れようは不自然だったんだよな。この蜘蛛の巣だって、巣があるのに本体は何処にも居ないし。舞台の小道具で、蜘蛛の巣状の糸を吐き出すスプレーがあるんだ。
それに……可笑しな事がもう一つ。
神乃木さんの死因だ。
塔のバルコニーから転落死……確かに手すりが低いこの場所で、背の高い神乃木さんは、うっかり落ちる事が出来るだろう。
でも下手なスポーツマンよりよほど身のこなしのしっかりしたあの人が、うっかり落ちてしまうものなのだろうか。僕は、どうしても納得出来ない。ここに来たのも、それが一番の理由なのかもしれないな。
とりあえず現場に来てみる。そして、そこに、花を添えて。
本人にしてみれば、花より珈琲がいいぜ、とか言われそうだけど、ここは相場ってものに従ってもらおう。
それにしても……高いなぁ……
このくらいの高さで落ちると、人はもう死んじゃうんだ。高所恐怖症の僕としては、居るだけで足の裏からぞわぞわした悪寒が走る。
――言っておきますけど、僕、高い所は苦手ですよ
――クッ……しかたねぇなぁ。怖がりのコネコちゃんの為に、二人で登ろうぜ
「……………」
そんな事言って、結局僕一人で登らせちゃったじゃないか……
神乃木さんの馬鹿……
階段を下りながら、そっと悪態をついた。
でも、死因が事故じゃないとしたら、殺人?でも、ここには誰も入って無いって言うし……まぁ目撃者が居ないだけなんだけど。
殺人でもなければ、自殺?それこそありえない。
じゃあ……やっぱりユーレイとか?
いやいやいや。ユーレイ云々はあの男のでっち上げなんだ。それに乗ってやる事は無い。
でも……どうしてそこまでして、此処が欲しいんだろう。
ここに、何かあるのかな………?
「危ねぇ」
「え……?」
今、確かに声がした。
そして、声のした方、上を見上げると、なんと塔の一部が崩れかけている!
「わぁ―――――ッ!!」
転がるように前へ逃げると、僕の体と入れ替わるように、立っていた場所に石が落ちてきた。
ズゥン、とかなりの重量で地響きがしたくらいだ。あれが当たったら、と思うだけでぞっとする。
でも、いきなりなんでこんなものが落ちてきて……
……呪い?
いやいやいや!しっかりしろ!古い館にはよくある事だろ!
こんな事で負けるもんか。
だって、この館は……神乃木さんが僕の為に取っておいてくれたものなんだから……!
朝がくれば昼が来て、だから当然夜になる。
周りが小さい森になっている此処は、夜になると何処からともなく何かの鳴声がする。あの声は、ふくろうだろうか。
「…………」
だめだ。
目が冴えて眠れない……
昨日は掃除で疲れきって、鳴声を気にする所じゃなかったからな。
うーん、アルコールの力でも借りてみようか……
本当は神乃木さんのお墓に添えようと思っていたブランデーなんだけど……
――ギャァァァァ………
「ッ!!」
ガシャン!と手にしていたグラスが落ちる。
な、何だ今の声!
パジャマの上に一枚羽織って、声の方へと走る。
声がしたとおぼしき部屋を開けてみると、窓が全部開けられていた。
おかしいな。閉じまりはちゃんとした筈なのに……
その時、アオーン、と何かの獣の遠吠えの声がした。
「っ、」
思わず、体が引き攣る。
へ……平気だよ。きっとまた悪戯だって。
僕を脅かして、ここから出て行かそうとしているんだ。でも、そうはいくもんか。
出て行かない。絶対に。
もう一度戸締りを確認して、布団に潜る。辛抱強く横になってきたら、その内眠気が襲ってきた。
そうして僕は、ゆっくり眠りについた。
しかし、また目覚める事となる。
……何だ、これ……
寒い……どうして……布団にしっかり潜ってるのに……
無視できない寒気に襲われ、意識が浮上した。目は閉じたままだけど、その分聴覚が鋭くなったのか、近づくような足音を耳が拾った。
誰なんだ……?こっちに、来る……?
逃げよう。そう思ったのに、どうしてか体が動かない。
どうしよう……やっぱり、ユーレイの仕業……?
本物、なのか……?
……神乃木さん……助けて……!
僕は必死に祈った。どうせならと、神様より頼りになる方を。けれど、無情にもドアが開く。
ギィィ、と殊更もったいぶったように開いたドアに現れたのは、薄ぼんやりとした人影。
少しして、人としての輪郭がはっきりして、顔も見えるようになった。
現れた人物に――僕は目を見張った。
そして、叫んだ。
「神乃木さん!」
その顔の作りは、どう見ても神乃木さんだった。
さっきまでの金縛りが嘘のように解けて、僕はベットから飛び降りて神乃木さんに駆け寄った。何度もその名前を言いながら。
「神乃木さん!神乃木さん……!
脅かさないでくださいよ!生きてたんですね!」
しかし、神乃木さんは近寄る僕に困惑し、そして眉を顰めた。
「……俺はカミノギなんて名じゃねぇ」
そんな風に返された怪訝な声は、嘘をついているようにも、ましてやからかっているようにも見えなかった。
……まじまじと見詰めていると……顔の作りは本当に神乃木さんにそっくりなんだけど、微妙に色々違う。髪はこんな見事な白髪じゃないし、肌の色は大分褐色だ。おまけに、目はなんだか赤い。カラコンでも入れてるのかな。鼻の上を真一文字に走る傷跡だって、神乃木さんにはこんなもの無かった。
じゃあ、この人は誰?
神乃木さんのそっくりさんは、言葉を続ける。
「それに、俺が死んだのは200年前の事だぜ」
……200年前?
何の冗談か、と問いかける前に。
相手に伸ばした手がすかっと空を切った。
胴体を突き抜けて。
「……………………」
……ユ、……ユ……! ユーレイ………!
その後地震でも来たような眩暈に襲われ、視界は暗転し僕はその場で卒倒した。意識なんてすぐに落ちた。
「……やれやれ……手間のかかるコネコちゃんだ……」
そうぼやく声が聴こえ、僕の体が抱き上げられた。
外が明るい。
瞼を通しても太陽の光が感じられる。
「ん………ん、」
起きなくちゃ。
そう思って、ベットに手をつこうと体を反転させると、何かが横にあるのに気づく。
うーん?何かベットに置いたっけかな、僕……
ぼんやりする頭と目でそれを見ると。
「――うわぁぁぁぁぁぁッ!?」
僕の横には、大きな男の人が寝ていた。そう、昨日出て来た神乃木さんそっくりの、あのユーレイ。おそらく、この館のかつての当主、つまり神乃木さんのご先祖様なんだろう。
「だっ……だ、誰ですか貴方!どうして一緒に寝てるんですか!
ユーレイなのにどうして朝になっても消えないんですか――――ッ!」
混乱し、動揺する心境のまま、次々と浮かんだ疑問をぶつける。
が、相手はそんな僕の大声の質問攻めに気にする事も無く、目を閉じてすやすや寝ている。
「ねぇ!何とか言ってくださいよ!」
身を屈めて至近距離で叫んだのが功を制したのか、神乃木さんのご先祖様はうっすら目を開ける。
そして、こう言った。
「……珈琲が飲みてぇ……」
全く、なんて人なんだろう。
僕はよりによって、昨夜気絶させられたユーレイ本人に朝っぱらから給仕する羽目になってしまった。
幸い、昨日インスタントコーヒーを買っていたので、それを淹れる。
でも、神乃木さんのそっくりさんは、それを一口飲んで、盛大に顔を顰めた。
「何だい、こりゃぁ」
「何……って、コーヒーですけど」
言って、自分も飲む。うん、ちゃんとコーヒーだ。その場で一番安いものだったけど、コーヒーだ。
しかし、神乃木さんのご先祖様は何が気に入らないのか、とても不満そうにカップの中を眺めている。
「おいおい、こっちの気持ちも汲んでくれよ。200年ぶりのコーヒーなんだぜ。こんな薄っぺらい味のものを飲まさせる身にもなってみろ」
うわぁ、何だかインスタントコーヒーあげた時の神乃木さんと同じ事言ってる……
って事はあれだろうか。この人も、豆から挽いたコーヒーしか飲まない性質なんだろうか。
「そんな事言われても困りますよ。僕、豆の挽き方とか知りませんし、この館の維持費とか考えると、嗜好品にお金かけていられないし」
「維持費……?アンタ、貧乏なのかい?」
……なんて率直に聞く人だ。
「ええ、そうですよ。お金無いですよ。でも、なんとか此処を売り払わないように努力しようとしているんです!」
それなのにコーヒーの味に煩いユーレイは出るし、変な男には脅迫されるし……
神乃木さんのご先祖様は、腕を組んで首を傾げる。
「……そいつは妙だな。確か俺ぁ子孫が困らない程度の蓄えは残しておいたつもりなんだが」
「えっ?」
そんなのは、初耳もいい所だ。そして、神乃木さんも内緒にしていたとは考えにくい。
「……そんなの、もう使われちゃってるんじゃないんですか?」
「いや、もっとこう、後々のヤツが困らないように……確か……」
――ガラガッシャァァァン!!
神乃木さんのご先祖様が何かを思い出す前に、何かが落ちた音がした。
「寝室だ……」
急いで二人で向かうと、さっきまで僕らが出ていたベットの上に、シャンデリア風の照明が落ちていた。
あれに当たっていたら、「オペラ座の怪人」の再現だ……
「ひど……い」
「もう少し寝坊してたら、ぺっちゃんこだったなぁ」
神乃木さんのご先祖様が、僕の肩越しにベットを覗き込んで呑気に呟く。
「貴方は平気ですよ。もう一度死んでるんだから。でも僕は……」
そこまで言って、はた、と思いつく。
「もしかして、貴方がやったんですか……?」
仲間を、ユーレイを増やす為に……!
僕の命を狙って……!
「……おいおい、馬鹿言っちゃいけねぇ」
神乃木さんのご先祖様は、少し慌てる。
「昨日の石も、開けっ放しのドアも!僕の事呪い殺すつもりですね!?」
「落ち着けって」
詰め寄る僕に、神乃木さんのご先祖様はそういって肩に手を置こうとした。
「触るなッ!」
バシ!と大きな音を立ててそれを打ち払う。
「……………」
「……………」
暫く、睨み合う。
神乃木さんのご先祖様は、払われた手と僕を交互に見た後、
「……俺じゃねぇ。本当だ」
それだけ言って――ふっと消えた。まるで蝋燭の火を吹いて消したみたいに。
「ぁ…………」
……言い過ぎた……かな……
消える間際、何だか彼は哀しい目をしていた。
よく考えれば証拠なんて何も無いんだ。なのに、あの人を疑ってしまった。
いくら恐怖に押しつぶされそうになっていたとは言え、八つ当たりはいけない。
お詫びの意味を込めて、僕はまた町に繰り出しコーヒー豆を買って来た。一応、神乃木さんが好きな豆だ。あの人は、自分でブレンドしていたけど、僕にはそんな知識も技術も無いし。普通に挽くのだって、どれだけ出来るか正直不安だけど、頑張ってやってみよう。
館に着いた。……神乃木さんのご先祖様の姿は、見えない。やっぱり、昼間には消えてしまうのかな?
「………た、ただいま……」
ちょっと考えて、僕は帰宅の挨拶をした。
けれど――
「―――――ッ!」
室内の光景を見た直後、持っていた荷物を全部落としてしまった。
荒らされていた。
泥棒が入って家捜ししたような、生ぬるいものじゃない。ナイフで壁もカーテンも滅多刺しにされて、テーブルや椅子の足は折れている……それどころか……
「ひどい……僕の服も……神乃木さんの本まで……!」
そっと持ち上げただけなのに、紙が背表紙から外れて落ちていく。ぱらぱらと落ちるそれを、僕はまた丁寧に拾い上げる。その紙に、ぽたり、と思わず涙が落ちた。
「――僕が何をしたって言うんだよ!」
ここに来て、ついに限界が切れたみたいだ。
怖い。
此処に居たら、僕もこの部屋みたいに滅多刺しにされてしまうんだろうか。この服みたいにボロボロにさせられるんだろうか。
怖い。
誰か助けて。
神乃木さん……!
いつの間にか走り出していたのに気づいたのは、どん、と何かにぶつかって立ち止まった時だった。気づけば、僕は庭に出ていた。
そして、ぶつかったのは神乃木さんのご先祖様だった。
僕は思わず、はっとなって身構える。それに神乃木さんのご先祖様は、まるでホールドアップするみたいに、武器の無所持を表しているかのように、軽く両手を挙げる。
「言っておくが、あれも俺じゃねぇぜ。濡れ衣着せられる前に弁明するがな」
突進して激突した事はまるで気にもしないで、神乃木さんのご先祖様が僕に言う。
「子孫のコネコちゃんを死ぬほど怖がらせて喜ぶ趣味はねぇ」
「コネ……なんですか、それ」
「違うのかい」
……いや、確かに神乃木さんは時々気紛れに僕の事を「コネコちゃん」呼ばわりしてたけど。
でも!今の言い方だと!何だか!まるで、その、僕が神乃木さんの……!
「っ!僕はコネコじゃありません!成歩堂龍一です!」
神乃木さんのご先祖様は、喉を見せるようにクッと笑った。そんな仕草も、神乃木さんそっくりで。
「判った。まるほどう、だな」
って、いきなり違うし。
訂正すべきなんだろうか。でも、直してくれない感じがひしひしとする……
うぅ、と唸っている僕に、神乃木さんのご先祖様の手がぼすん、と乗る。背も高ければ、手も大きい。
「落ち着いたかい」
固い髪だろうに、わっしゃわっしゃと掻き混ぜる。
落ち着いた、と言われて何の事だろう、と一瞬考えてしまった。
そうだ、さっきまですごく怖くて……でもどうしようもなくて……ただただ、怯えていた。
今はそんな気持ちは失せている。神乃木さんのご先祖様のおかげ、なんだろう。
ありがとう、とお礼を言おうとして、困った。
「……そう言えば、貴方の名前、知りません」
神乃木さんのご先祖様って呼ぶのも妙だし。長いし。
「ゴドー、だぜ」
こめかみに中指と人差し指の二本指を沿え、何だか格好つけて言う。気障な仕草だけど、妙に決まっていた。
「……ありがとうごさいます。ゴドーさん」
僕が礼を述べると、神乃木さんがまた笑った。優しげに。
「ともかく、ありゃぁ生きてる人間の仕業に違いねぇ」
あれから荒らされた部屋を掃除して、それからお風呂に入って僕も含めて綺麗になる頃にはすっかり夜になってしまった。窓の外から三日月が見える。
「生きてる……?」
力強く断言したゴドーさんに、髪を拭きながら尋ね返す。
「この館に居るユーレイは俺だけだぜ」
「……本当ですか?」
「ああ。他の連中はちゃんと成仏しちまってるよ。アンタの飼い主も含めてな」
……飼い主って……だから……
粗方水分を吸い取ったタオルを、頭から降ろす。
「じゃぁ、生きてる人間って、一体誰なんですか?」
「さあな、そこまでは」
ゴドーさんにも判らないみたいだ。
もうちょっと推理というか、今後の対策を考えないといけないんだろうけど、この時すでに僕の眠気が意識を蝕み始めていた。悪いとは思いながら、欠伸が出る。
それ見て、ゴドーさんが苦笑するように笑った。
「再度の大掃除でお疲れのようだな。
じゃ、俺はカビ臭い納骨堂へ戻るとするぜ」
そう言って、席を立ったゴドーさんの袖の裾を――僕は思わず、掴んでしまっていた。
「…………」
きょとんとしてそれを眺めるゴドーさん。僕も同じような顔で自分の手を見詰める。
「ごっ、ごめんなさい、おやすみなさい……」
これ以上妙な事をしないように、さっさとベットに潜る。
……朝、あれだけぎゃあぎゃあ騒いでおいて、そのくせ今は寂しいから居て欲しい、なんて虫がいいにも程があるよな……
勢いをつけて、一気にぼふりとシーツを被る。
けれど、シーツから出ている頭を、ゴドーさんが優しく撫でる。
「ずっとここに居てやるから。安心して休みな、コネコちゃん」
だからコネコちゃんって……もう、いいや。今は、眠い……
ごそり、と寝返りを打って、寝心地のいい場所を探す。
「……ゴドーさん、どうして急に触れるようになったんですか?」
ふと気になった事を訊いてみた。
確か昨日の夜は、腕が体を通り抜けた筈なのに。それを見て気絶したのだから、間違いない。
「ああ。あんなコーヒーでも飲んだからある程度復活したんじゃねぇのか」
「何だ、それ……」
凄い適当な答えに少し噴出してしまい、他愛ない会話をしながら、僕はゆっくり眠りに落ちていった。
空気の通りをよくする為、風が直接当たらないように開けている窓から夜風が入り込みカーテンをふわりと舞い上がらす。
明りが一切消えた室内だが、ゴドーの目は成歩堂の姿を確実に捕らえていた。その寝顔すらも、はっきり見て取れる。約束した通り、彼が眠った後もなお、ゴドーは傍らに居た。スツールを移動させ、その上で足を組んで座っている。
「……いい気なもんだぜ」
と、ゴドーはその寝顔を眺めて思わず呟いていた。
あれほど怯えていたというのに、今はとてもすやすやと寝息を立てている。案外神経は図太いのかもしれない。
「無邪気な寝顔しやがって。……いったい、どんな夢を見てるんだい?」
――カタン……ギィィィ………
「――っ!」
聴こえた物音に敏感に反応する。成歩堂を見やると、彼は目を覚ます事無く眠り続けていた。それに少し安心し、さっきの物音から続いて現れた足音の向かう方向へ、ゴドーは意識を飛ばした。
暗い、まだ掃除をしていない何処かの一角に誰かが蹲っていた。実質ここの持ち主の成歩堂は眠っているのだから、誰にせよ不法侵入者だ。
「……やった……やっと見つけた……!」
何か歓喜の声と思しきものを発し、人影はごそごそやっている。何やら鞄のようなものに手を突っ込んでは、確認するように手を止めては進めていた。
ゴドーはその真後ろに、音も無く現れた。
しかし、気配と冷気は感じたのだろうか。男がはっと振り返る。
ゴドーは無表情に告げる。
「その鞄……渡してもらおうか」
――うわぁぁぁぁぁッ!………
「っ!?」
今、誰かの叫び声が聴こえた。
ゴドーさん?
身を起こして周囲を見ても、闇が広がるだけで、あの銀髪が無い。
「ゴドー、さん……?」
何処に、行ったの?
とりあえず……声のした方にでも行ってみようかな。
声のした方を辿って行くと、この辺りはまだ手をつけていないから、全体的に埃っぽい。ここも、その内掃除しなくちゃなぁ……
そのまま壁に手をついて、手探りで足を進めて行く。
「や、やめろ……!あっちへ行ってくれ!来るなぁっ!」
ん?何か話し声がする。少し足を速めた。
「それは俺が子孫に残したものだぜ。大人しく返しな」
ゴドーさんの声?誰と話してるんだろう……
「やめろっ!こっちに来るんじゃない!」
何だか、何を話しているかはさっぱりだけど、2人の会話はいまいち噛み合っていないみたいだ。
ようやく話し声の発信源を探り当て、中に入っていく。
「ゴドーさん?」
入るドアからは、ゴドーさんの背中が見えた。そして、相手の男の顔も。
!
あいつ……僕が来た初日から、さんざん嫌がらせをしたヤツじゃないか!ならやっぱり、部屋を荒らしたのも、こいつか!
「殺すつもりは無かったんだ!」
男が喚く。
「ただちょっと脅かしただけで……!き、君が勝手に落ちたんじゃないか!」
「何の事言ってんだ?」
さっぱりわけが判らない、というようなゴドーさんの声。
……まさか、あの男。
ゴドーさんと神乃木さんを間違えてるんじゃないだろうか。
だったら、こいつが……
こいつが、神乃木さんを……?
「ぼ、ぼくはただここから出て行ってくれればそれでよかったんだ!それなのに……
べ、べ、別に死んでくれって、頼んだ訳じゃない!
お前が勝手に死んだんだ!」
はっきりと。
男はそう、叫んだ。
「……………」
ああ……やっぱり、事故じゃなかったんだ……神乃木さんは、殺されたんだ……
………神乃木……さん……
――神乃木さん!
「……君が、やったのか。神乃木さんを……」
僕の……大切な人を……!
「この、人殺し!」
向こうにとってはいきなり現れただろう僕に、男は思いっきり戦く。
「ち、違う!その男が勝手に……!」
「……落ちてしまえばいい。落ちて、死ねばいいんだ。神乃木さんと同じように……!」
言いながら、男を窓際まで追い詰める。案外簡単だった。僕が進めば、相手が後退する。
「や……やめろ……来るな……っ!」
何の武器も無い僕に、ひたすら怯えている。影から攻撃するのは出来るくせに、表立って面と向かい合うと何も出来ないんだ。
見れば見るほど、なんて卑小な男なんだろう。神乃木さんはこんなヤツに……
こんな、ヤツに……!
「おい、まるほどう!」
ゴドーさんが僕を止めようとする。
けれど、それより早く僕は男を窓から突き落としていた。
――どんっ!
「うわぁぁぁ〜〜〜っ!」
間抜けな悲鳴を間延びさせ、窓から体が完全に出た直後、べちっと潰れたような音がした。
肩を掴まれ、ぐるんと視界が反転する。怖いくらい真剣な顔になったゴドーさんの顔が、間近にあった。
「まるほどう!なんて事するんだ、これじゃお前もあいつと同じ……!」
ゴドーさんがあんまりにも僕を真剣に諫めるので、何だか可笑しくなってけらけらと笑ってしまった。
「ゴドーさん、落ち着いてください。今の音聴こえませんでした?すぐに落ちた音がしたでしょ。
ここ、1階ですよ」
怪我をしたところで、せいぜいタンコブくらいだろう。
「……何だと?」
ゴドーさんはまるで、キツネに鼻を抓まれたような顔になった。ますます、僕は笑ってしまう。
「僕もちょっと脅しただけですよ。いい気味だ」
「……アンタも大概いたずらっ子だぜ」
ゴドーさんは焦った後の疲れを見せてに言った。それを見て、僕はまた笑う。
「本当、いい気味……」
もう一回、言ってやる。
……あれ、可笑しいな。笑ってる筈なのに、何で涙が出るんだろう……
いつの間にか、ぽたぽたと目から涙が落ちている。
「……でも、あいつが死んだって、神乃木さんはもう戻らないんだ……
神乃木さんは……」
「成歩堂……」
ゴドーさんが初めて僕の本名を呼んだ。
こんなタイミングで呼ぶなんて、ずるい。
ますます神乃木さんを思い出してしまって……
泣いている顔を見られるのが嫌で、目の前にあった胸に頭をとん、とつけた。ゴドーさんは何も言わず、肩を抱いてくれた。
「神乃木さん……きっと痛かっただろうな……」
死んじゃったくらいなんだ。物凄く痛かっただろう。
「泣くんじゃねぇよ。もう誰もアンタの大事な人を傷つけはしねぇんだから。
天でアンタをきっと待ってる。
ずっと、ずっと……アンタが天寿を全うするまでな……」
「…………」
泣くな、と言われても涙が勝手に溢れてしまう。いい加減止めないと、とは思っているのに。
今頃になって、神乃木さんの死が哀しくて仕方無い。どうしようもなく。
「ほら、シャンとしな」
ゴドーさんは僕を顔をゆっくりと持ち上げ、零れ続ける涙を指でそっと拭った。
「そんなに寂しけりゃ、アンタが次の飼い主見つけるまで俺が居てやるよ」
ユーレイだけどな、と付け加えられたセリフが可笑しくて、僕は噴出してしまった。
「ありがとう、ゴドーさん……」
そう言って笑いかけると、ようやく涙も止まった。
頬に流れたままの涙を拭う。
「それにしても……どうしてあいつ、そこまでしてここに執着してたんだろう」
ざっとあげただけでも、不法侵入に器物破損、殺人と殺人未遂。実刑は免れないだろう。何年かは牢屋の中だ。かなりの目的が無ければ、ここまではしないだろう。
「さあな。俺には判らねぇ」
ゴドーさんは肩を竦めてみせた。そして、その手には何か鞄みたいな物を持っていた。
「……何なんです?それ」
「ああ、これか」
ゴドーさんは何だか嬉しそうだ。
「これが例の、俺が残した秘密の遺産、だぜ」
何時の間に秘密になったんだろうか。まぁ、いいや。
「見てもいいですか?」
「いいぜ」
承諾を得たので、遠慮なくぱかっと開ける。
そこには、溢れんばかりの紙幣が詰まっていた。
「うわぁー、凄いお金……」
こんなに沢山の紙幣、初めて見た……
って。
ちょっと待て、これは……
「ゴドーさんって、200年前に死んだんですよね……?」
「ああ、そうだぜ」
なら、紙幣は旧紙幣でなければならない。なのに、此処にあるのは……
「どうして全部新札………?」
「……何だって?」
思わず、顔を見合わせた。
後から聞いた警察の調べによると、あの男は巨大な詐欺集団のメンバーだったそうだ。
しかしアジトに警察が入り込んで来たので一時稼いだ金を避難させる事になり、その場所にあの館が選ばれた訳だ。それまで誰も使っていない所だったのに、急に人が来たものだから、あの男は神乃木さんを脅し、僕に嫌がらせをしたのだそうだ。
そして平和な日々がやって来た。本当は、そこに神乃木さんが居るはずだったんだけど……
少し風変わりで、とても優しい日々――
「ゴドーさん!ゴドーさーん!」
「おっ、ブレイク・タイムかい」
何処にいるかと思えば、庭に佇んでいた。ユーレイは足音が無いから、何処に行ったのかが全く判らないから困る。
「違いますよ。犯人逮捕に協力したからって、謝礼金が出たんですよ!
これでしばらく、ゴドーさんが馬鹿高い豆買っても大丈夫ですね」
てっきり喜んでくれると思ったのに、どうしてかゴドーさんは少しずっこけた(特に、馬鹿高い豆、の件で)。
「はぁ……情けねぇな。金を気にしながら豆を挽くなんて」
空を仰いで、悲劇役者のように呟く。
そんな事言われても、お金が無ければ豆は買えない。これは、世の中の真理だ。
「あーあ、俺の遺産が見つかりゃ、今頃何も気にせずコーヒーの純粋なアロマだけ堪能出来ただろうぜ」
朝から数えて15杯飲んでも、まだ足りないと言うのか。ちなみにまだ昼飯前だ。
「……ゴドーさん……」
僕はふと思い当たった。
ゴドーさんが、天に昇らないでここに留まっている理由。
「それで、成仏出来ないんですか?」
「ん?」
ゴドーさんが振り返って僕を見る。
「自分にも見つけられないところに隠しちゃった遺産が気になって……それで?」
「……例え自分で入れたとしても、カップの底は、飲み干した後じゃなけりゃ判らないのさ」
誤魔化すように、手に持っていたコーヒーをぐびりと飲む。
神乃木さんと似たような事を、大分意味を違えて言う。
その違いが何だか楽しい。
――こうして、ゴドーさんと二人で居る僕を見て、神乃木さんは何て思うだろうか。
もし天で待っている内に妬いてくれるなら、いつか此処に来て、ゴドーさんと3人で失われた遺産を探しましょう。
僕は、いつまでも待ってますから。
<END>
元はめるへんめーかーの「ペニントン館」です。全4巻で面白い!
まるほどうが神乃木さん神乃木さんと煩いのは、まぁ、元の都合って事で。
だって夫婦なんだもん。未亡人なんだもん。