その通りを通った誰かが言う。あそこに店があったと。
 そして同じ道を通った誰かが言う。そんな所に店は無いと。
 何故こんな証言の捻じれが産まれるかと言えば、そこは店舗を構えつつも飲食店として営業しないからだ。敢えて言うならその店の主が、好きな人に自分の持てる全てを持って美味しい物を食べさせたい、という極めて利己的な願いを叶えるためにそこは存在する。
 この世界でたった一人の為にしか作りたくないという、ある意味料理人に最も不向きな男がキッチンに立っているのである。
 さて、その「店」は今日「開いて」いる。この「店」が開く条件は1つだけ。料理人である佐藤が腕を振るいたいという相手が訪れる時だけだ。
 主な相手は吉田だが、今日は違う。何故なら、彼女も今日は佐藤と似たような衣装に身を包み、給仕する側としてここに居るからだ。
「吉田、落ち着きなよ」
 材料の最終チェックと器具の置き場所を調整しながら、カウンターテーブルの傍にいる吉田に佐藤は声を掛ける。ここに来る時は「外食」として訪れる吉田は、ちょこっとだけおめかしをしてくる。そのちょこっと加減が微笑ましくて、材料費や光熱費を気にする吉田に佐藤はその目の補充だけでおつりがくると思っている。けれど今は、白いシャツに深緑のエプロン、下は黒いズボンと言うシンプルなウェイター衣装だ。これどうよ、とジャックが意気揚々と持って来たメイド服は佐藤の箪笥の奥深くに仕舞ってある(持ってるのか)。
「う~、だって……」
 あちこちうろつくまではないものの、いかにもそわそわと落ち着かない風の吉田は、その自覚があってか、言葉を濁す様に呟く。何せ、これから訪れる「客」は吉田にとってもある意味特別な相手だからだ。予定の時間まで5分を切った。もう、いつ来ても可笑しく無い。
 ちょっと気を落ち着かせる為にも何か摘まませよう、とかすぐにでも出せる食材を佐藤が脳内で探っていると、ドアが開く。カランコロン、と佐藤の旧友が自国の蚤の市で買って来たドアベルが鳴る。
 ずっと緊張状態が続いていた吉田は、その音で一層慌てふためいた。
「あ、あ、えっと、その、いらっしゃいま、イタッ!!」
 たたずまいを直す時、爪先をどこかにぶつけたのか、背筋を伸ばした次の瞬間、吉田が声を上げる。
「も~、何してんの、アンタは」
 そんな彼女の様子を見て、心の底からあきれ果てたような声と顔。けれど、その裏にはこれまでも注いできただろう愛情が変らず潜んでいるのが、佐藤には見て解った。
「いらっしゃいませ、お母義様。上着と荷物をお預かりしますね」
 ベルが鳴った時、佐藤はカウンター内のキッチンから出ていた。足の痛みと闘う吉田の頭を軽くぽん、と叩いてから、代わりに彼女の母親の前に躍り出る。白いシャツに黒いベスト。コックというよりバーテンダーのような出で立ちの佐藤に、吉田の母親ははしゃぐように目を輝かせた。
「あらー、隆彦くん、お久しぶりね! そんな恰好も素敵だわ~v」
「ありがとうございます」
 素直な感謝を述べて、佐藤は淀みない手つきで預かった上着をハンガーにかけ、その近くの台にバックを仕舞う。
「吉田、大丈夫か?」
「もう、平気っ」
 若干涙目であるが、支障を来たす程では無いらしい。佐藤が母親の上着やバッグを仕舞う間、吉田も父親のコートを手にしていた。佐藤のように優雅とは言わないが、なるべく綺麗にハンガーに掛けようともたついている様子はとても可愛らしい。そう思って佐藤が眺めている少し横、父親もそんな娘の様子に相好を崩していた。吉田のような娘が居たら、きっと可愛くて仕方ないんだろうな、と佐藤はすっかり同感する。
 再びキッチンに戻った佐藤は、改めて2人と向き直る。
「まずは――結婚記念日、おめでとうございます」
 佐藤からの言葉に、2人も幸せそうに応える。この日は、吉田の両親の結婚記念日なのだった。


 佐藤が店を持っている――営業しないで本当に持っているだけ――の、完全非公開のこの店であるが、知っている人数はそこそこは居る。まずは艶子およびこの店の開設に携わった人々。佐藤の旧友は殆どここに当て嵌まる。そして、吉田がぽろっと漏らしてしまった相手。けれど、その前提には余程気心の知れた仲という条件が含まれるから、滅多なトラブルには発展しない。まあ、若干騒動の火種の持ち主は居るけども(例:牧村)。
 けれど、この吉田の両親については、佐藤が教えてくれないかと申し出た。もしよければ、結婚記念日なり誕生日なり、そういう特別な日に招く事が出来たらと。世界で一番吉田を大事に思う佐藤が、次に大事だと思うのは彼女を生んで育ててくれた両親だ。2人は吉田の両親らしく、美味しい物が好き。そうなれば、自分がその彩りを添える事が出来るかもしれない。
 吉田が実家に戻った折、その話題を取り上げればすぐさまに行きたい、と母親が声を上げた。そうして一番近かったのが結婚記念日だ。佐藤がメニューを決めても良かったのだが、どちらかと言えば要望に応えたい佐藤の意向でまずはリクエストを尋ねた。本当に何でも良いのなら、という吉田の母親を叶える形と相成ったのが今夜のディナーである。
 フライヤーの中からジュワッと良い音を立ててフリッターが揚がる。下手な店の揚げ物は、その匂いだけで気分が悪くなりそうになるが、佐藤は勿論そんな下手は打たない。むしろ、この揚がっている音だけで口の中が美味しい、と感じそうだ。
「どうぞ、タラを揚げてみました」
 差し出されたフリッターを、ざくっと良い音を立てて齧る。そうして、グラスに注がれた発泡ワイン――イタリア語で言う所のスプマンテをくいっと煽る。ふぅーっ、と吐き出される息は充実感と満足感に満ちていた。
「ん~、とっても美味しいわ! もう、何を頼んでも美味しいのねぇ」
 感心しながらもまたもワインを一口。口の中で弾ける泡が脂っこさを洗い流し、次の一口も新鮮な美味しさを感じされる。
 母親が佐藤に出したリクエストというのは、揚げたてのフリッターをスプマンテと一緒に食べたい、というものだった。フリッターもスプマンテも、その辺のレストランにも置いてあるが、目の前でこうして揚げてくれるという所は中々無かった。自分の要望が叶い、満足そうな母親を見てちょっと不満そうなのが吉田である。
「ていうかこれって、串揚げとビール、みたいなもんじゃん」
「良いじゃない。食べてみたかったんだもの」
「そうだけどさ~、でも……」
 皿に盛る必要が無いので、吉田のする事と言えばワインを注ぐのみだ。けれど、吉田の不満はそこではない。
(何頼んでも美味しいって、そりゃそうだよ、何作らせても佐藤は美味しいもの!)
 牛肉を焼かせれば絶妙な火加減を通してくれるし、コンソメも自分で煮込む事から始まりその出来上がりは湖の水よりも澄んでいて美しい。そして何より、とても美味しいのだ。他にも魚介類たっぷりで、サフランも効いたパエリア。餃子や飲茶の類もその生地から手作りだし、なんとラーメンだって作っちゃうんだから!!つまりは、そういう佐藤の腕の見せ所が無くて吉田は詰まらないのだ。そして、思い出した自分へと振る舞われた料理の数々を思い出し、ふふふ、と少し思い出し笑いをする。その吉田を見て、近々彼女の為にまた料理しよう、と佐藤が密かに決意する。
「隆彦くん、材料に合わせて衣も変えているんだね」
 同じようにグラスを持った父親が、佐藤に確認するように問う。え、そうなんだ、とちょっと驚く吉田の前、佐藤はその通り、と頷いた。
「一応、その素材と合うハーブを混ぜてあります」
 フリッターは大体魚介類を揚げたものであるが、それに限らず肉類や野菜、果物も揚げる事もある。牛肉にはセージ、豚肉にはイタリアンパセリ、鶏肉にはレモングラスを衣に混ぜてあるのである。さっき、間の箸休めとして揚げたバナナのフリッターにはシナモンをまぶした。
「さすが隆彦くんね!仕事がちゃんとしてるわ~。で、アンタは何かしたの?」
「何だよ失礼だな!ちゃんとやった!なぁ!?」
 吉田の最後の呼びかけは佐藤に向けたものだ。佐藤は、頷く。
「ええ、そのピクルスと最初に出したサラダのシーチキンは、吉田が拵えたものなんですよ」
「え、シーチキンもかい?」
 軽く瞬いて父親が驚く。ピクルスが手作りなのは気付いていたが、シーチキンもとは気が回らなかった。
「へぇ~、自分で作れるものなんだねぇ……」
「乱暴に言ってしまえば、オイルで煮る感じですかね、作るのは。ただ温度をキープして煮込み続けるのが結構手間なんです。吉田はとても火加減を気を付けてましたよ」
 感心する父親に、軽く説明を施した後、吉田の功績を告げる。シーチキンを作るのにもさまざまなレシピがあるが、佐藤が選んだのは80~90℃キープして1時間程煮込むレシピだ。その間、吉田は佐藤に代わる事はしなかった。
「あ、父ちゃん、ワイン」
 空になったグラスを見て、吉田がボトルを差し出す。
「ああ、ありがとう」
 酌をする度に礼を言う。酔っているからという訳ではなさそうだ。注いで貰ったグラスを手に、にこにこと父親が言う。
「娘の酌が一番美味しく感じられるねぇ」
「えー、お父さん、私じゃ不満だっての?」
 すかさず、母親が父親に絡む。自分にヤキモチしないでも、と吉田は複雑な顔をする。
「勿論、母さんと飲むお酒は別格だよ」
「やだもう、お父さん大スキッ!」
 隣で座りあったまま、母親は愛する夫と腕を組み、凭れ掛かる。これもまた、酔っているからではないのだった。
 小学校に上がってから、少しばかり世間が見えるようになった時、どうやらウチの両親はその辺の親とは違うようだ、と解った時から幾度となく浮かべた遠い目をする吉田。娘である吉田はそんな風だが、未来の婿である佐藤としては父親の手腕に惚れ惚れとしていた。自分も見習おう。
「隆彦くんの作るフリッターは本当に美味しいねぇ。ほら、食べてみるかい?」
 ワインを注ぐ為、自分の横に来た吉田に、父親がそっと勧めてみる。当然ながら、今は夕飯時。吉田は軽く腹の中に入れたというのに、条件反射のようにちょっと小腹が空いていた。まあ、目の前でとても美味しそうにフリッターが揚がる様を見続けているのだから、無理はない。
「イチゴ、揚げようか?」
 果物を揚げる時は衣に少しばかり甘味を付けてやる。これで立派なデザートだ。
 吉田は思わずごくり、と喉を鳴らすが、けれどふるふると横に首を振った。
「今日はいいや。ほら、もっと飲んでよ」
 父親と、そして母親にも酒を勧める吉田。
 今日は彼女も、もてなす側としてこの場に居るのだ。


「ふぅ、お腹いっぱい。ありがとうね、隆彦くん」
「いえいえ」
 むしろこちらこそ感謝したいくらいだ。こんな特別な日を一緒に祝う事が出来て。
 食後のデザートは、カシスのシャーベット。油ものを食べた後の口を、さっぱりとさせた。
 吉田の両親は、作り手側から見て良い客人だった。美味しそうに飲み、食べ、楽しそうに会話を咲かせる。それは吉田にも受け継がれていた。
「でも、ここで美味しい物を食べると、本場のも味わっちゃいたくなっちゃうわね。きっと、隆彦くんの方が美味しいんでしょうけど」
 掛け値なしに褒められ、佐藤はちょっと気恥ずかしくなった。
「ねえ、お父さん」
 と、横に座る夫に呼びかける。
「少し先だけど、定年迎えたら海外旅行しましょうか? 2人っきりで。アンタは隆彦くんとよろしくしてないさいv」
「何その言い方……」
 むぅ、と剥れながらも顔の赤い吉田だった。
「………………」
「お父さん?」
 物言いたそうに、見つめる夫の顔を逆に見返す。すると、ふふ、と優しげな笑みを浮かべ、佐藤の方へと向き直った。
「こちらから言い出そうと思ったんだけどね。隆彦くん、頼めるかい」
「はい」
 佐藤は快く頷き、シェイカーを取り出す。カクテルを作るつもりなんだろうか。佐藤は、カクテルもよく作ってくれる。大体は、その場その場で、吉田が好きそうなものを作ってくれるのだが、かと言ってクラシックなレシピで作れないという訳では無い。
 どうやら、事前に佐藤とは何かを打ち合わせていたみたいだ。吉田も知らない。何をするんだろう、と興味を持ってその手元を見つめる。佐藤の手つきは洗練されていて迷いが無い。ドライ・ジン、グリーン・ペパーミント、パイナップルジュース、それらをシェイクしてグラスに注ぐ。すると、グラスの中は爽やかな緑色が広がる。ス、とそれを母親の前へと差し出す。
「綺麗な色ね。これ、なんていうカクテル?」
「アラウンド・ザ・ワールドです」
「アラウンド……世界一周て事?」
「はい」
 佐藤は頷く。本来なら爽やかな酸味が食欲を刺激させてくれる為、食前酒が望ましいカクテルなのだが、今日は食後にと父親に頼まれたのだ。
 自分が海外旅行に行きたいと言った後に、世界一周という名のカクテル。この符号は何かの意味があるのだろうか、と母親のみならず吉田も思った。そして、父親が言う。
「出張が多い部署になって、母さんには本当に苦労かけたね。だから、定年を迎えたら、今度は母さんと一緒にあちこち行こう。日本中じゃなくて、世界を一周して」
「え………」
 今一飲み込めない、と目をぱちくりさせた母親。その様子を見て、プロポーズした時もこんな反応だったなぁ、と父親は過去を振り返り、微笑む。
「世界一周って……??」
 置いてけぼりでも食らったように、きょときょとと視線を彷徨わせる母親に、佐藤が説明する。
「艶子の事は知ってますよね?あいつが今度旅行事業にも手を出そうとしていて、その一角に自社で作った豪華客船での世界旅行の企画があります。そのテストプランとして参加して貰えるなら、費用は格安に抑えられますよ。まあ、船は現在も作製中ですから、まだ実物も見せられないんですけど」
 元をただせば佐藤と吉田の新婚旅行にどうかしら、と勧められたプランであった。しかし5年以上も先の計画で、その時に新婚だと思われているのは若干佐藤としても不本意というか。時期的に見れば吉田の父親定年の方がタイミングに合う。そして今度は佐藤つてに吉田の父親へと伝わったのだ。渡りの船とばかりにその提案を受け、この日、このカクテルを振る舞うと同時に話を切り出そうと計画したのである。話の流れで、きっかけは母親の方となってしまったが。
 佐藤からの台詞を受け、ようやく頭の回って来た母親は感極まったように涙を零し始めた。
「う、うぅっ……お父さぁ~~~ん!!!」
 背丈で言えば、母親の方が背が高い。けれど、その体をしっかり受け取り、父親は肩に顔を埋めて無く母親の背中をそっと撫でる。その光景に、吉田もぐすん、と鼻を鳴らしていたが、ここは気付かないふりをしてあげるのがマナーだろうと、佐藤は用もないのにグラスを磨いた。


 着た時よりもその距離を縮め、2人は帰って行った。店には、佐藤と吉田が残る。
 カウンターテーブルを拭きながら、吉田はさっきの事を思い出していた。母ちゃん、本当に幸せそうだったな。そして何より、そんな幸せを与えられる父親が凄いと吉田は思う。
 それはそうと。
「あのさ、佐藤。そのテストプランって、どれくらいの値段?」
 頑張って手が出せるのであれば、自分も行ってみたい。色んな世界の、色んな美味しい物を味わうのだ。ファッションブランドの事なんて、最初から頭には無い吉田だった。
 チョコレートの本場ってスイスだっけ、ベルギーだっけ、と無邪気に話す吉田。その吉田を、佐藤はじっと見つめる。その様子は、まるでさっき、母親を見つめた父親のようで。
「……何?」
 そして吉田もまた、母親と同じように声を掛けていた。佐藤は力を抜くようにふっと口元を緩める。
「……まあ、今日はそんな日なんだろうな、きっと」
「????」
 何やら一人で納得している様子だ。説明が欲しい、と吉田が態度で訴えていると、佐藤はカウンターに座るように促す。何となく決まっている席に腰を下ろすと、佐藤はまあ出ていたままの一式でカクテルを作る。
 シェーカーの中で氷がぶつかる軽い音は、何かを奏でているかのようだ。
 グラスに注がれたカクテルは、さっき母親に振る舞ったのとはある種、真逆の色彩だった。さっきはまるで明るい陽に照らされた草原のような色だったが、目の前にあるのは月に照らされた夜空のような紫色をしている。
「これは?」
「ブルームーン、っていうんだ」
 へぇ……と霞むような声で返事をして、吉田はそのカクテルに見入っていた。ショートカクテルは出来たてを味わうもので、出された後にぐずぐずしていてはいけないのだが、すぐに飲んでしまうのが勿体ないとすら思う。
 そんな吉田の胸中を思ってか、グラスを持ち上げた佐藤が、吉田の唇にそっと押し当てる。まるで口付けの様な行動に、吉田の頬にぽっと灯る。吉田も手を添えたが、押し付けられるように口の中に流れ込んだカクテルは、ふわりとした花の芳香の後レモンの酸味が舌の上を流れる。後味はすっきりしたものだ。
「美味しい?」
「うん……」
 大抵、甘いものが好きな吉田の為、佐藤も甘いカクテルを作ってくれる。このブルームーンはそれらに比べると中口といった具合だが、花の香りが鼻孔を擽ってくれるからか、吉田も美味しく感じられた。
 けれど、どうしてこれを振る舞われたのだろうか。さっきの事を思うと、これにも何か意味がありそうだけど。
 そう思いながら、カウンター内の佐藤に目をやる。佐藤は、真っ直ぐに自分を見ていた。そして、言う。
「お義父さん達が世界一周旅行ならさ、」
 にこり、と浮かべた笑みは、まるで子供のように悪戯っぽくて。
「俺たちの時は、月に行こうよ。吉田」
 まだ飲みかけのカクテルからは、スミレの香りが辺りを漂う――


 月って、月に旅行って、そんなの、行けるかどうか解らないじゃん。
 けれど吉田はそう思ったのは、深夜、佐藤の腕の中で微睡んでいる時だった。それまでずっと、ふわふわと本当に宇宙旅行でもしているような気分で。
 だって、そんな約束してくれた事自体が嬉しい。もしかしたら実現するかもしれないそんな未来にも、ずっと一緒だと。
 ホントに行けたら良いな。佐藤の鼓動を感じながら吉田は眠りの淵に落ちて行く。
 そんな心境で眠りに落ちたからか。その夜、吉田の見た夢は、月面の見えるレストランでウサギが給仕してくれた料理を佐藤と食べているという、なんとも荒唐無稽で、そしてとても楽しい夢だった。




<END>


*園也さん、誕生日おめでとうございます~~!!(^▽^)どうぞ受け取ってやってくださいね!!