「えっ、休日出勤?」
「そう、しかも出張」
 吉田はひとしきり驚いた後、箸で摘まんだままだった鯖の味噌にをぱくん、と口に入れた。味噌が魚の生臭さを綺麗に消している。だから、吉田の顔が芳しくないのは、料理に問題がある訳ではない。佐藤の眉間がいつもより皺が深いのも。
「そんなに、忙しいの?」
 佐藤の身体を気づかい用に、吉田が尋ねる。そうじゃないよ、と心配された事を嬉しそうに返事した。
「前にも言ったろ?ウチの所、曜日じゃなくて日付で動く時もあるから、その都合だよ」
 場合によっては休日出勤になる事もある、というのは佐藤が就職してから割とすぐに聞いた事だった。忘れていたという訳でもないが、改めて現実として受け入れるとなるとまた話しは別だ。
 それにしてもいきなりだな、と吉田は胸中で呟いた。今週末とは言うものの、今日はすでに水曜日。金曜の夜からの出張なので、明後日の事である。ホントにいきなりだ、と吉田はもう一度思った。
「代休はあるんだけどさー。そのまま月曜日に持ち越しで」
 とは言うものの、佐藤の表情は一向に芳しくない。それも当然と言えよう。吉田が居ない休みなんて、佐藤にとっては休みでもなんでもないのだった。ただ、仕事の無い日に過ぎない。
 まるでふてくされた子供のような佐藤が可笑しくて、吉田はちょっと吹きだしてしまった。最初、というか高校で再会した時は、何もかもが完璧で、凄いと同時に少し怖いとも思っていたが、付き合って行くようになると佐藤にも抜けている部分があるのだと解り、そしてその度に好きと言う気持ちが深くなっていった。それはまだ、現在進行形のようだ。
 確かに、佐藤の言い分も最もで、せめてもう少し早ければ吉田も合わせて休みを取れたのだが、さすがに今からだと無理だろう。多忙を極めている訳ではないが、決して暇でも無いのだし。
「ま、仕方ないよ。そんな時もあるって」
 佐藤があからさまに不貞腐れてみえた事で、逆に吉田の気が持ち直したのか、その後の食事は美味しく過ごせた。佐藤が居ない、と聞いて、味が落ちてしまったような気さえしたから。
「じゃあ、金曜日は朝早く起きたりする?」
 後片付けを一緒にこなしながら、吉田が佐藤を見上げて尋ねる。折角自分用にと踏み台を貰ったのに、まだ見上げなければならない身長差だった。
「いや、終業後に向かう形だから、朝はいつも通りで……」
「?」
 見上げる吉田の顔をじぃ、と見つめたかかと思えば、何故か黙ってしまう佐藤。なんだろう?と怪訝に思った吉田が口を開けなかったのは、佐藤の唇が触れて来たからだ。
「吉田v 一緒に風呂はいろvv」
「え、えええ、何をとつぜん!!」
「だって、金曜の夜の分まで、今から貯めておかないとvv」
 吉田が手にしていたのが最後の一枚なのを良い事に、佐藤はひょぃ、と横のシンクに上げて、ついでに吉田の身体も上げた。連行されるように、風呂場に向かう吉田(佐藤に抱えられて)。
「ちょ、ちょ、ちょ、佐藤! 明日! 仕事!!」
 落ちない程度にバタバタと暴れつつ、真っ赤な顔をして、明日も仕事あるんだからちゃんと加減してね、と言いたかった吉田だった。


 そんな調子で、金曜の朝はいつもよりぼーっとした身体で吉田は出勤した。
(もー!こういう所、全く成長しないんだから!)
 仮に同じ会社だった場合、高校の時と同じく所構わず襲われてたりしたのだろうか。いかんせん否定の材料が見つからない。
 吉田が佐藤の部屋にやって来て、晴れて四六時中一緒vvと佐藤もはしゃいでいた矢先だったのだろう。しかも突然の事で、その不満さも一入だったようだ。
 だからと言って自分にぶつけられても……とふらふらする足を持て余して吉田は思う。佐藤もさすがに昨夜やり過ぎたと反省していた。悉く自分の制止を無視され、剥れてた吉田の唇に佐藤はちゅん、と小鳥のつばむ様なキスをして、分かれた。これでまるっと一日、佐藤に会えない時間が続く。
 部屋に一人になる吉田を心配したか、どこか吉田も友達の所とかに泊まったら、と言いだしたのは佐藤だが、吉田はそうはしなかった。やはり話しが突然だし、まあそれでも居ない事は無いが、空いてるからと言って予定を無理やり詰め込むのは吉田の趣味じゃない。それに、例え佐藤が居なくても、あの家に帰って来たかった。
 あの空間は、もう紛れも無く、自分の居場所だった。佐藤と住む、あの家が。


 昼食を終えた後から、吉田が微妙に悩んでいたのは晩御飯の事だった。何せ、1人である。時に、自炊が逆に手間になる分量だ。
 あれこれ考え、晩御飯は買って帰る事にした。たまにあと一品欲しい、という時愛用しているデリカッセンがあるのだが、いつもは副菜を買っている所を、今日はメインに手を出してみようと思う。
 ラザニアの入った袋をぶら下げ、吉田は家のドアを開ける。
「ただいまー……」
 声が吸いこまれる静寂に、堰をしてもひとり、という一文を吉田は連想した。
 ラザニアを温め直すと同時に、一人用のタジン鍋で適当に温野菜をグリルにした。汁ものが欲しいなぁ、と思った吉田は、レトルトのスープを取り出した。レトルトであるが、材料や保存をきちんとしていると定評のあるメーカーのものだ。下手な素人が作るのより余程美味しい。
 支度を整えた吉田は、一人での夕食を始める。もくもく、と咀嚼する音がとても大きく感じられた。
 ラザニアは勿論美味しかったのだけど、どこか味気ないような食事を終え、後片付け。いつも見ているドラマを見た後、風呂に入る。普段ならその後、佐藤と過ごす甘いひと時が待っているのだが、勿論佐藤は今は居ない。その事を思い、浴槽の縁に凭れながら、吉田はぼんやりとした。
 風呂からあがると、メールの着信を報せるランプが点滅していた。見れば送信者は佐藤で、ホテルに着いた連絡だった。より正確に言うなら、ホテルについて一息つけた頃に送信したらしい。すぐさま、吉田も返信する。電話をちょっと期待したが、同僚と一緒らしいので、その目を気にして多分してこないだろう。
 その後、他にする事も無く適当にチャンネルを回してみる。しかし、どれも詰まらなく思え、早々に寝てしまう事にした。こんな時は、寝るに限る。
 そうしてベッドに潜ったはいいが、次は眠気が中々やって来ない。いつもより早い時間というのを差し置いても。
 眼が冴える、というより、単に眠れない。佐藤が居ない空間が気になってしまうのだ。ベッドも、広くてすかすかする感じがする。思えば、佐藤抜きにして過ごすのは、これが初めてだ。だから慣れて居ないのだろう。
 高橋とシェア生活をしていた時、お互いの都合――例えば実家に帰るだとか、そんな都合で一人で過ごす時もあった。その時はまだ、一人を楽しむ余裕くらいはあったのだけど。
 吉田は何度目か解らない寝がえりを打った。ぱさり、と髪が枕に広がる。
(うーん、寝酒でも飲もうかな……)
 そんな事をちらりと考えるが、そういう飲み方は癖になっても困るからなるべく控えた方が良い、という両親のコメントを思い出した。吉田としても、酒はどちらかと言えば場を盛り上げる良い小道具という意味合いが強いので、一人で飲むのはあまり気が進まない。とは言え、寝付きが良くないのも事実。
 吉田は明かりの無い天井を見上げ――ふと思いついた事を実行しようと、一旦ベッドを抜け出したのだった。


 例え佐藤が居なくても、吉田の土曜日はやってくる。休日の特権として、朝寝坊をした吉田は、うにゃむにゃ、と寝癖のついた頭のまま、トーストを齧っていた。半分がジャムで、半分がピーナツバターを塗っているパジャマ姿のまま、自堕落な朝を向かえていると、携帯が鳴り響いた。この着信音は、佐藤からの通話である事を告げている。吉田はトーストを持っていた手を拭いて、慌てて電話に出た。
「も、もしもし!」
『何慌ててるんだ? もしかして、寝てたのか?』
 クック、と意地悪そうな佐藤の笑い声が、電波から吉田の耳に繋がる。むぅ、と少し顔を赤くして「何か用があるの?」と本題を促すように切りだす。
 そして佐藤は言う。
『なあ、折角だから、駅で待ち合わせして、そのまま夕食行かないか?』
「うん!それいいいね!行こう行こう!」
 吉田は大いにはしゃいで返事をした。電話越しにその表情が見れたような佐藤は、そっと口元を緩める。
 佐藤と出掛けるのも嬉しいし、外食自体も結構久しぶりだった。
 それに、一緒に住むようになってから、どこかで待ち合わせて、という事が無くなった。一緒に暮らしているのだから、それは当たり前なのだが。
『何か、リクエストあるか?』
「うーんとねぇ…中華がいいな。この前行った所、美味しかったよね、小龍包がさ」
『よし、そこにしよう』
 とんとん拍子に決まって行く事に、吉田は今からワクワクしてきた。美味しい料理が、待ち遠しい。勿論、佐藤に会えると思うから、また楽しみなのだ。そしてそれは、佐藤にとっても同じ事だった。


 吉田が希望した店は、ドレスコードは無いけれど、それなりに身なりを整えた。でも、どんなに着飾った所で年相応に見えない自分に、鏡の前で吉田は背を落とす。未だに、中学生と間違えられる。……良い方で。
 変わらない外見と同じに、佐藤が吉田の事を可愛い、と表するのもそのままだった。吉田は自分の身体のパーツの、どこを持って可愛いのかさっぱり解らないが、佐藤がそう思うならそれでいい、と思えて来た。でも、自分何かより、佐藤の方がよほど可愛いのにな、と吉田は思う。吉田はよほど自然に佐藤の事を可愛いと思っているが、むしろ佐藤をそんな風に思う事の方が希有だと、多分吉田は気付いていない。
 昼も簡単に済まし、吉田は街に繰り出した。良い天気で、行楽日よりというヤツなのだろう。明るい青空で、なんだか余計に嬉しくなった。
 その空が、どんどん朱色に染まっていく。佐藤と、もうすぐ会える時間が迫って来た。
 メールが来る。着いた、という合図。
 待ち合わせの為に設置したような時計台の付近で待っていると、やがて待ちに待った人影が現れた。
「吉田」
 最後の数メートルを、佐藤は小走りで近づいた。早く会いたいという、佐藤の気持ちが如実に現れていた。
 吉田も、そんな佐藤を出迎えようとして――
「……………」
「?どうした?吉田?」
 言葉も無いように、自分を食い入るように見つめる吉田に、佐藤は首を傾げる。変な事はしていないのに。まだ。
「えっ、あ、えっと!!」
 佐藤の声に、自分がぼうっとしていた事に気付いた吉田は、慌てて言い繕う。
「なんか、佐藤の仕事着の所って初めて見るかもって……」
 そう言って、真っ赤になって指をもじもじさせた。好きだという気持ちが嵩じた時の吉田の仕草である。
「そう? この格好でいつも出掛けているのに」
 家を出る時間に大差は無いのだから、スーツ姿なんて吉田も目にしている筈だ。それこそ、毎日。
「家で見るのと外で見るのは違うよー」
 解ってよ、とばかりに吉田は上目づかいで訴える。物凄くキスしたいが、本当にしたらとてつもなく怒るのだろうな、と思って佐藤は自重した。これから、楽しい時間が待っているのだから、それを置いて目の前の楽しみに飛び付く真似はしない。
「…………」
「な、何だよぅ」
 さっきとは逆に、佐藤が吉田を見つめている。無言で。意趣返しか何かか、と吉田が身構えていると、佐藤がふ、と顔を綻ばせる。
「いや……こうやって、待ち合わせして会うのって、久しぶりだから――
 なんか、逆に新鮮でいいな、って」
「……………」
「まあ、ずっと一緒に居るのも、勿論いいんだけどな」
 佐藤が自分で話題を完結してしまったようで、吉田は何となく、自分もそう思ったというのを言いだせなかった。こういうセリフのタイミングが、未だに掴めなくて困る。
「さ、それじゃ行こうか」
「………うん」
 佐藤に促され、吉田は並んで歩き出す。
 ああ、この感じだ、と吉田は思う。佐藤が隣に居るこの感覚。昨夜から、ずっと探していたもの。
 会いたいという気持ちを募らせ、渇望してやっと得られる今のような気持ちは、一緒に住むようになった今となっては、遠くになりつつある。
 それでもこうやって、たまに訪れるものだし、何より2人で過ごすのが当然という安心できる心地よさは、もはや掛け替えのないものだった。


 吉田と暮らすようになって、この部屋は「家」になったのだと、佐藤はつくづく思う。それまでは、あまり「帰る」という概念が薄かったように思える。ただ、身を置く場所が変わるだけ。会社から、この部屋へと。
「ただいまー」
 唯一の同居人と一緒に帰宅だというのに、そんな声を上げる吉田が可愛い。にこにことした顔で佐藤が見ているのを、靴を脱いでいる吉田には気付かない。
「紅茶、淹れるね」
 と、言って吉田はさっそくケトルを手にする。スーツ姿の佐藤は、部屋着に着替える為、一旦寝室に引っ込んだ。寝室が、一番その家の生活さが凝縮されているように思う。客人を入れるような部屋では無いからだろうか。
 吉田と暮らすようになるに辺り、しかし調度品等は特に揃える必要は無かった。強いていえば、衣服くらいなものだっただろうか。その他、細々とした物(本当に細々とした物)
 思えば食器すらも、佐藤は一人暮らしの時からすでに吉田と暮らす事を想定していたように、2つ揃いのを何となく買っていた。吉田がこの家にまだ「外泊」であった頃も、飛び込みで泊まりになる事があっても、全く不便しない用意が整っていた。
 結局ベッドもそのままだ。買い換える事をそれとなく吉田に持ちかけてみたが、特に換える必要はないという返事だった。まあ、確かに、買い換えるにしても気分の問題で、不便さからではない。それでも、1つだけだった枕が2つ並んでいるのを見ると、まるで別物のように感じられた。
 と、そのベッドに、枕でもシーツでもないものが置かれてある。犬のヌイグルミだ。黒い長毛種のダックスフンドの。
 吉田と一緒にやって来た品物の中に、ヌイグルミがある。とは言えそれらは、何かのお土産だったりゲームセンターの景品だったり、するものが大半だ。最初から求めるように購入されたヌイグルミは少ない……というか、これだけではないだろうか、と佐藤は思う。これは吉田が買ったものだ。一緒に居たから、覚えている。吉田がヌイグルミを買うなんて珍しいな、と思ったから尚更だ。彼女にとってヌイグルミは、愛玩用というより景品に近い。
 そして、それらのヌイグルミは大抵ひとまとめに出窓に並べられている。この犬も、そこに居たのではないか。
 昨日の夜から、この家には吉田しか居ない筈だから、ここへ持って来たのも当然吉田という事になるだろうが……何のために?浮かんだ疑問のままに首を捻りながら、着替えた佐藤はダックスフンドを持って居間に戻った。紅茶は、蒸らしの時間を終えてカップに注がれている。
「ねえ、レモンはどうす……あ」
 佐藤が手にした物を見て、吉田が声を上げる。尋ねる前に、正解が出た様なものだ。やはり、ベッドに持ちこんだのは吉田で間違いない。
「これ、なんで枕元にあったんだ?」
「……あー、うー……それは………」
「何、言えないような事なの?」
 楽しそうに佐藤は言う。意地悪な子供の顔だった。
 こういう佐藤は、きっと言うまで質問を止めない。早い内に言ってしまった方が、傷は浅いだろうか……と観念したように吉田は口を開いた。
「だから……昨日、ちょっと寝る時、隣がすかすかして落ちつかないなーって思って……」
 揶揄されるのを今から覚悟しているのか、吉田はややむっつりと答えた。顔が赤いから、可愛いだけだ。
「べべべ、別に寂しかったとかじゃないからな!」
 ツンデレだ、と佐藤は胸中だけで呟いた。
「ま、それはそうとして……なんでコレだったんだ?」
 吉田の前に鼻を突きだす感じで、ダックスフンドを取り出した。すると、吉田はさっきよりも顔を赤くさせる。想像はしてなかったその反応に、佐藤の好奇心がまたも疼く。
「そういや、これって吉田が買ったヤツだよなー」
 さも、今思い出したというように佐藤が言う。とぼけようとしていた吉田は、それで観念したようだった。あぅ、と小さく呻いた後、呟くように言う。
「……だって、それ……毛がさらさらしてて、佐藤の髪みたいだーって……」
「…………」
 吉田があまりに可愛い事を言うので、佐藤は一瞬耳を疑ってしまった。これを買った理由が、自分に似ていたからだって?
 そう思巡していた佐藤の態度を、吉田は何と履き違えたか、ムキになったように吉田は尚も言い募る。
「〜〜佐藤がさ、前に、猫のヌイグルミ取って「吉田に似てるーv」とか言って買ったじゃんか!だ、だから、だから……」
 自分も仕返し(?)のように買った、との事らしい。
 吉田の発言を元に、佐藤は「そう言えばそんな事があったなぁ」と呑気に思い返していた。あれは猫のヌイグルミが欲しかった、というより吉田の反応が楽しくて買ったようなものだ。それでその後は吉田にあげたのである。味気ないこの部屋(今は違うけど)に置くのはちょっと可哀そうだと思ったから。
「ふうん、そっかー。これ、俺に似てるのかv」
「ぅ……さ、さらさらしてる所だけ」
 逆襲に遭うのが怖いのか、吉田は念を押した。やたらじゃれつく佐藤を指して、犬っぽいと称して、その後とんでもない目に遭ったのは記憶に濃い。
「じゃあ、早い所元の位置に戻してやらないとな。俺に似てるんだったら、きっと寂しがり屋だしな」
 自分で言うか、と吉田はささやかに突っ込んだ。顔が赤いまま。
 佐藤は立ち上がってヌイグルミ達のコロニーとなっている出窓に向かう。吉田を連想したその猫の隣は、ぽっかりと空いていた。そのスペースには、勿論この犬があった場所。吉田に似ていると言われた猫の隣、佐藤に似ていると買った犬が位置する。そう置いたのは、吉田だ。やり返したというより、一人ぼっちの分身が可愛そうに見えた、というのが真相ではないかと佐藤は睨む。
 ダックスフンドを元の場所に戻す。 隣が埋まった事と定位置についた事で、その2つの顔が違って見えたように思えたのは、多分錯覚なのだろうけど。
 犬にしろ猫にしろ、ヌイグルミは完全に真っすぐには座らない。しかしその傾きさは、丁度2匹を寄り添う様な形にしていた。
 佐藤がソファに戻り、並んだ2人が同じ形になるまで、さほど時間を必要とはしなかった。




*おわり*