自分ばかりだけされるのは不公平だ、と吉田は佐藤に不服を訴えた。
 その言い分は解らないでもないが、佐藤は少し考えてしまう。何も意地悪だけで吉田だけを乱している訳では無いのだ(まあ、まるで意地悪でないとも言いきれないが)。初体験どころか、自慰で指すら挿れた事すらない未開通の吉田は、それでも近頃は触れるだけで熱く蕩けるようになったとは言え、自分の猛った怒張が入れるとはまだとても思えない。強行に押し通せば、痛い思いをさせるどころの騒ぎではすまないかもしれない。それで吉田がセックス恐怖症にでもなったら、ある意味本末転倒もいい所だ。再会以前ならともかく、こうして再び出会えた以上、吉田とだけ身体を重ねたい。だから吉田がしたくないと言い出したら、かなり困る。無理矢理してしまうか、他の女性で代用するか――どっちにしろ、吉田を泣かせる事には違いない。
 何とか、2人でして、快楽だけを感じる術は無いものか。ベッドの上で吉田から苦言を貰ってから、僅か数秒の間に佐藤の頭の中はこれだけ思巡していた。そして、妙案を思い付く。
「うん、いいよ。今日は2人で気持ちよくなろうv」
 その佐藤の笑みに、自分の要望が通ったというのに吉田の背中にあまりよくない感じのものが伝った。

 そしてそういう予感はよく当たるもので。

「ほら吉田。早く早くv」
「………うー………」
 吉田はついさっきの自分の発言を、恨めしく思った。自分だけじゃなくて、佐藤にも何かしたい。今からする事は、その言葉をそのまま実現したような事かもしれないけど。でも。
「吉田」
 再三促され、それに後押しされるように下着姿の吉田はのろのろと身体の体勢を変える。怠慢な動きになるのは、胸の中で暴れるような羞恥の為だ。
 佐藤はベッドの上で、完全に寝ころばないで、椅子のリクライニングを全部倒したような緩い角度で横たわっている。その上に、吉田が覆いかぶさる。佐藤の天地とは真逆に。所謂、セックスナインの体勢だ。相手の顔前に秘所を晒す格好に、顔から火が出そうだった。
 これで、互いの最も感じる箇所を双方が舐る訳だ。これなら吉田の言い分も叶い、佐藤の懸念も払拭される。まあ、万端だと思えるのは佐藤だけで、吉田はこの姿勢に止め処ない羞恥で後悔の念すら抱いている。折半案で、せめて下着はつけたままにして貰った。直接見られるなんて、恥ずかし過ぎる。
「……ちょ、佐藤、な……ぁっ………」
 半ば硬直してしまったような吉田の体を解すように、ほっそりしてても柔らかい内股を、佐藤の大きな掌がねっとりとした動きで這う。時折、揉むように指に力を込めた。その感触に、吉田が戦く。感じる――とまではいかないが、体がざわつく。どちらかと言えば、撫でる手の動きが悩ましい。膝裏から、足の付け根まで、下着の中に指先が僅かに入り込むギリギリまで吉田の肌を佐藤は楽しんでいる。
「ぅあ……やぁ……っん……!」
 ぶるぶると足が震えて、上半身を支えていた腕の力が抜ける。と、佐藤の下半身がダイレクトに視界に飛び込む。今はズボンに隠れている佐藤を、今から吉田が口でするのだ。勿論、そんな事は初めてだった。手で触った事なら、数度あるのだけど。
 あれに、口で触れる。はたしてどんな感覚なのか、まるで掴めない。想像不可能で、興味と恐れが同時に、同じくらい沸く。
「口でするのが嫌なら、手でいいよ」
 吉田の躊躇を見抜いた佐藤が、そう告げる。躊躇っていたのは確かだが、そういう言い方されると――
「い、嫌じゃないもん………」
 佐藤だって、指より口でされた方が気持ちいい筈だ。自分だってそうだ。恥ずかしくて言えないけど。
 自分ばっかり気持ちいいのは嫌。佐藤にも同じくらい気持ちよくなって欲しい。そんな気持ちで、言いだした事なのだから。
 そうだ、今日は佐藤を気持ちよくさせるんだ! 
 使命感に燃えた吉田は、羞恥も躊躇も忘れ、ズボンのジッパーを下ろし、佐藤を取り出した。こういう状況だからか、佐藤のはすでに反応を来している。これがまだ大きくなり、熱くなる事を吉田は知っている。ただ、佐藤に対してのみだが。
 まだそこまでの昂りではないそれを、吉田はそっと手で支え、まずは先端にキスでもするように唇をつけた。途端、どくん、と脈打つ。それに合わせ、太股を這う手にも緊張が走ったようだった。
(佐藤、気持ちいいの?)
 そう思うと、遠慮がちだった吉田の動きも、段々と大胆になってきた。初めて舌に乗せた味も感触も、あまり良いものとは思えないが、佐藤のだと思うと堪えられた。それに相手が感じてるのだと思うと、苦にならない所かもっとしてあげたくなる。すっかり手の支えの要らなくなった佐藤を、全体舐めまわすように忙しなく口と舌を動かした。次第に唾液以外のものが吉田の唇を濡らす。
 はあ、と佐藤の口から悩ましげな溜息が零れた。
「……吉田、いいよ……すごく気持ちいい………」
 それが建前ではなく、本心からなのが吉田にも解った。嬉しい、と思うと体が熱くなる。
 吉田の足を撫でまわす掌から、肌がしっとりしていくのを感じる。自分のを舐めて吉田が興奮しているのかと思うと、そのまま佐藤の劣情も駆り立てる。
(さて、そろそろ俺も――)
 最初は吉田の邪魔をしないように、自分からの行動は控えていた佐藤だが、大分慣れて来たようだから、それを解禁する。
 水色に白のドットという、手持ちの中の一番可愛い下着を吉田が選んできたのは想像に難くない。そんな可愛らしい吉田に小さくクスッと笑い――つぃ、と真ん中のラインをなぞる様に、指を滑らす。
「ひゃぁっ!?」
 最も快感に敏感な箇所を触られ、吉田の肢体がビクンと撓った。
 軽く触っただけなのに、足が余韻のように震えている。本気で可愛がったら、どうなるんだろうな。佐藤の楽しみが広がる。
「吉田ばっかりさせてたらダメだろ」
 戸惑う吉田に、したり顔で佐藤が言う。
 それにしても振り向いた吉田の顔――頬が紅潮していて、唇は濡れ、目はトロンと熱く蕩けていた。あんな顔で自分のを舐めていたのか――出来れば、その顔も観賞したかったな、と思う。この体勢、体の反応が顕著に解っていいのだが、顔を見れないのが難点だ。
 いっその事、ビデオでも設置してやろうか――とりあえずこの案は保留にして、今は目の前の吉田だ。たっぷり、可愛がってやらないと。自分とする事が気持ちいいと思えるようになるまでは(まあなってからもするだろうが)。
「んっ……ふ、んんんっ……!!」
 少し強めに指を擦りつけると、ぴくんぴくんと足が面白い位に震える。佐藤の悪戯にもめげず、吉田は懸命に唇を這わす。快感に流されまいと、自分を愛撫するのを放棄しない吉田が健気で、だから余計にちょっかいかけたくなるのだ。亀裂をなぞるような指を、少し上の方にずらす。こり、とした硬い感触を見つけ、まずは軽く擦ってやる。すると、今までとは段違いの反応を見せた。
「あッ――――! ダメっ、さとう、そこ触んないで!」
 かなり際どい事までしているが(今だって)佐藤を受け入れてない吉田はまだ実質処女も同然だ。だから、此処が最も感じるのだろう。
「やだ。触るv」
 だって吉田可愛いんだもん、と相手にとってはあんまりな言い分で事が進められていく。指で擦られる度、感じる度合いがどんどん増して行くのに、吉田は危機を覚える。ここままでは、確実にイッってしまう。
(やだぁ、また、一人だけ…………)
 自分だけ喘ぐのは、もう嫌だ。すん、と鼻を鳴らした吉田は、余程熱さを携えた佐藤に舌を這わせる。どこで佐藤が大きく反応したかを、ちゃんと学びながら。そして、そこを重点に舐めてやった。ビクビクと撓る佐藤に、いつ達するのかの判断はまだ吉田には見当も出来ない。早くイケばいいのに。そう思うのはどちらも同じらしく、吉田が愛撫の度合を強めれば、佐藤のする事も激しさを増して行った。
 自分を追いつめる指から逃れようと腰を浮かすと、その分佐藤の顔には近くなる。それを幸いにと、佐藤は顔を寄せ、下着の上から其処を舐め上げた。
「んきゃぁ!? さ、佐藤! ダメだってば、それ!!」
「脱がして無いよ」
 切羽詰まってるのか、佐藤の返事は短い。
「そ、そうだけど――ひィッ!! んぁぁぁッ! やぁ―――ッ!!」
 下着の上から、布越しに舐られる何とも言えないじれったさに、吉田の頭の中がぐちゃぐちゃになる。ぷつぷつと、堪えていたものが、途切れるようだった。
(やだぁ、また、一人だけ………)
 自分だけ喘ぐのは嫌だ。それを思い出した吉田は、今にも達しそうな身体を叱咤して、今度は舐めるだけではなく、佐藤を口に含んだ。とにかく、何かで気を紛わせたかったのだ。そんな苦肉の策とも言える吉田の行動だったが、熱い粘膜に包まれるこの仕草が、今までの中で最も強く佐藤に快感を与えた。一瞬、呼吸が詰まる程に。
「―――ッ! はっ、吉田ッ……!」
「んく……んむぅっ………!」
 こうして口を塞いでしまえば、恥ずかしい声も漏れないと気づいた吉田は、含んだままの口内で舌を動かした。
 包み込むのとは別に柔らかく熱いものが這う。こそばゆいような感覚に、腰の辺りがぞわぞわっとした。佐藤は限界を予感し始める。
 相手の動きに任せず、佐藤は細い吉田の腰を掴み、強引に引き寄せた。其処はすでに、佐藤の舐めた唾液で濡れぼそっていたが、それだけでも無いようだ。さっきと同じように、指と舌で可愛がる。吉田が咥えたまま喘ぐものだから、その些細な振動がまた佐藤を襲う。そしてそれを、吉田を愛撫する事で発散する。吉田も同じようなスパイラルに陥っていた。相手に施す事で、自分に刺激が舞い戻って来る。まるで遠まわしな自慰をしているようだ。改めて自分達の取っている体勢の恥ずかしさに、吉田は焼けるような羞恥を感じた。
 先に根を上げたのは、おそらく佐藤だった。液を吸えないほど含んだ布地の下がどうなっているのか――それを見たいという欲求に、もはや逆らえなかった。クロッチ部分をずらす――無垢である其処は、すでに十分潤っていて、赤く熟れていた。ごくり、と佐藤の喉が鳴る。初めて女性の其処を見た訳でも無いというのに――いや、初めてか。好きな子のは――衝撃と感動を混ぜたような歓喜による興奮を思う。
「あっ、あああッ!さとう、やだ!! 見ないでって言ったのに!!!」
 現場を目撃しないでも、捲られた事は解る。口から佐藤を外して、吉田は声を上げて抗議した。そこがはしたないほど濡れているのなんて、誰が一番解っているかと言えば勿論吉田なのだから。
「だって、我慢できないだろ、コレは………」
 ずらしただけで脱がして無い、とまた屁理屈をこねるかと思えば、逆に開き直った。何だか声が自棄みたいに聴こえる。実際佐藤はもう破れかぶれだった。吉田にして貰うのが、こんなに理性を飛ばすなんて。余裕も何もあったもんじゃない。ただ、相手を可愛がって、自分も気持ち良くなりたいだけ。
 最も恥ずかしい所を見られた吉田は、胸を焼く羞恥にすんすんと嗚咽を漏らしていた。
「ひっく……うう、さ、佐藤の嘘つきぃ! もう、ばかぁッ!」
「うん、ごめん……」
 一言侘びといて、佐藤は欲しがってるように見えてやまない其処へ唇を落とした。
「ひゃぁううぅぅぅッ!!」
 堪らず、吉田が叫び声をあげた。指よりも、布越しよりも、直に舐められるのが最も感じる。当たり前と言えば当たり前の事だが、そんな当然を吉田はあまり受付たくない。
 身体で最も柔らかいのかもしれない其処を、佐藤は唇で押し分けて行くと、小さいながらも拓いている孔を見つける。時折ヒクつかせながら、伸縮の動きと一緒に熱く甘い滴りを溢していた。それだけを見ると、もう自分を受け入れる準備は万端のように思える。此処はもっと拓かないのだろうか、と孔に尖らせた舌を潜り込ませてみる。
「ぃきゃぁああッッ!?」
 体内に入って来た舌に、感じたというよりはその感触に驚きの声を上げる。
「イ、イヤ、んああッ!! さとう、やだ、舌ッ! 舌ぁ―――ッ!!」
 引き抜いて、というセリフが出てこない吉田に、まるでもっと入れて欲しいのかという錯覚が佐藤を掠める。おそらく限界くらいに膨らんだ花芯を弄ると、孔が少し大きくなる。ずくずくと舌を侵入させていくと、吉田の嬌声がより甲高い響きを持つ。
「あ―――ッ! ヤだってば―――ッ!! 止めてぇっ!! ひんっ、あンあぁぁぁぁッ!!」
 敏感な所を弄られ、未開の場所を穿られる。本当に気がおかしくなりそうだった。上半身――というか全身から力が抜け、縋る物を求めて佐藤の足にしがみ付いた。時折、頬に熱い佐藤の昂りが当たるが、そんなのは気にしてなれなかった。
「は、ひっ! んアッ! あぁんん―――ッッ!!」
 舌が中で動く度、ビクビクと体が跳ねる。もしかしたら、その都度軽く達してるのかもしれない。そんな事すら、今の吉田には判らない。ただただ、体の中で感じた事の無い痺れと疼きが暴れ回っている。それはじわじわと集結、そして再び体内で爆ぜる。その後、自分はどうなってしまうんだろう――朦朧としてきた頭の中で、それが恐怖だった。
「ひ――くゥっ! んあ、あっ、あんッ!――ひぃんッ!」
 ちゅぷ、と佐藤の舌が引き抜かれ、その時吉田が一際大きく鳴いた。はー、はー、と止まらない嬌声で乱れた呼吸を、整えようとする。
「吉田……俺のもして。イキそう……」
「あ……う、ん………」
 一番の弱点を責められていたせいで、すっかり佐藤の事が疎かになっていた。いや、その原因は佐藤なんだが。
 ある程度昂らせたままほっと居た事を詫びるように、吉田はちゅ、と軽くキスをした。ぴくん、と反応するのが可愛いと思う。
 吉田はどうしようかを考え、おそらく、佐藤が尤も感じただろう事をする。あむ、と口に入れるだけ、佐藤を頬張った。思った通り、一段と大きくビクンと戦慄く。自分で気持ちよくなって欲しい。それだけの一心で吉田は舌と口を動かした。妙技も何も無い、拙い動きだが、好きな子が自分に懸命に奉仕してくれるだけで、佐藤のものは弾ける寸前だ。すぐにでも放ってしまいたいが、今の快感をずっと続けたいとも思う気持ちが、解放の瞬間を遅らせていた。それに、溜めた分だけ、放たれた時の快楽も大きくなる。
 もうすっかり濡れてしまった吉田の下着を、脱ぎ取ってしまう。ここまで来たら、もう相手からの文句も無いだろう。布の隙間から見えるのも結構そそるものがあったが、何も邪魔されず曝け出す光景に釘づけになる。取られた恥ずかしさからか、吉田の腰が揺れる。まるで強請るような仕草に見えて、佐藤は夢中で口付けた。こんなに我を見失うのは、吉田に対してだけだろう。
「んくっ!! ん、ふ、んぅぅぅぅうううッ!!」
 敏感な箇所に舌が潜り込む感触に、一度体験した事である程度耐性がついたのか、今度は口から佐藤を溢す事無く、何とか耐えられた。
 舐められてる所から背筋にかけて、強い快感が伝う。ビリビリと痺れるような感覚に、自然と口の中の佐藤に知らず歯を立ててしまう。かしかしと歯の当たる感覚は、痛みはなくむしろ心地よい刺激となって佐藤を盛り上げる。
 ぐぐん、と膨らむ熱が解放にと追い込まれているのを察した佐藤が、吉田も追いつめる為にそれまであえて触れずにいた花芯を口に含んだ。舌で転がしたり、啄ばむようにしたり。まだ処女である為、快感を感じる術がそこにだけ集中している吉田にとって、目が眩むほどの刺激だった。悲鳴のような嬌声が、佐藤を加えているために潜もって聴こえる。
「んんッ! んんん――――ッ!!」
 強過ぎる快楽にか、吉田から涙が零れる。
(や、やだぁ……!本当に可笑しくなる――!)
 佐藤はまだイかないのだろうか。今度は吉田は、抗議の為に歯を立てた。それが留めだったようだ。
「――あっ! 吉、田――――ッ!」
 どぷんっ、と熱い迸りが吉田の口の中で爆ぜる。いきなり口の中を満たしたものに吉田は吃驚し、そして暗に佐藤の目の前で行く所を晒したくないとセーブしていたものが霧散する。抑制から完全に解放された吉田が、絶頂を迎えるのは瞬間だった。
「ん―――――ッ!! ……………っ…、…………」
 力の抜けた全身を突っ張って、駆け抜けるような恍惚が過ぎ去った後、完全に弛緩した体がくたん、と佐藤の上に倒れる。
(イっちゃった……佐藤の舐めながら………) 
 恍惚に身体をひくつかせながら、吉田は自分の醜態に震えた。
 けれどもそれは佐藤も同じ事で、佐藤となら一緒に堕ちても構わないと、そう思った後はむしろ穏やかな気持ちになれた。


 何だかんだで汗をかいたし、下肢は互いの液に塗れて口元も同然の状態だ。すっきりしたい為にも、2人は湯船に浸かった。
 はふ、と溜息を吐いて、吉田は湯船の縁に凭れ、先ほどの感覚が尾を引かないのか、頭の中がぽーっと浮かんでるような気分だった。
(凄かった……じゃなくて、気持ち良かった……でもなくて!)
 何も考えないようにしてると、さっきの事が頭を過る。しかし、何か考えようとすれば、さっきの事しか浮かばない。どっちにしろ、吉田はふにゃぁ、と顔を崩し、顔を赤くさせるしかなかった。
「吉田v」
「わきゃぁっ!」
 それまで、吉田の一人百面相を楽しんでいた佐藤だったが、愛おしさが堪え切れなくなったのか、背後から間のお湯ごとばしゃん、と抱き締める。逞しい胸板と腕に包まれ、また体が熱くなりそうな吉田だ。
「凄い気持ち良かったな……やっぱり、2人とも感じてる方が、気持ちよくなれるんだな」
「う………うん………」
 喜々として言う佐藤は子供みたいに無邪気で、お前には恥じらいが無いのかとツッコむのすら忘れてしまう。顔どころか体まで真っ赤になってしまった吉田の体を、より抱きしめ、小さい後頭部にいくつもキスを落とした。そして、耳の近くで言う。
「吉田もいつもより感じてたみたいだし……v これからはアレでいこうかv」
「え……あ、ぅ…………」
 今日は「佐藤にも何かしたい!」という気持ちが強かったから何とか出来たが、そうでない時にあの恥ずかしさに耐えれるか正直疑問だ。
「ダメ?」
「う………っ」
 甘えるような表情と声の佐藤に、吉田は嫌とは言えなくなってしまった。吉田がこういう顔に弱いと知ってる上での佐藤の計算だ。にやり、と心の中でほくそ笑む佐藤。
「………た、たまになら」
 消え入るような声で、そう言う佐藤がとても可愛い。
 今日の調子で、どんどん快楽に貪欲な体躯に変えてしまえば、もしかしたら破瓜の時でも痛みを与えないかもしれない。気持ちいい事を与える自分を、吉田はもっと好きになるかもしれない。佐藤は明るい未来に心を馳せた。
「吉田……俺、頑張るからなv」
「? う、うん?」
 何の決意かは判らないが、頑張ると言ってるのなら、何か重大な事なのだろう。ある意味吉田の見解は正しい。尤も、本当に真の理解を果たすのは、それからまだ暫しの未来の事だった。